「冒険」から「探検」への旅へ ―あひるは飛ぶよ?!―
『あひるの家の冒険物語』の連載が終わって半年になります。
冒険家・角幡唯介さんよると、「冒険」にはいくつかの要素があって、その中でも★脱システム★主体的であることが重要だと言います。40年余り前に始められたこの八百屋も、「冒険」と言えるものだったのではないかと思います。
高度成長に突入し、「大きい・速い・システマティック」であることが謳歌されつつある社会にあって、「無農薬野菜の八百屋をやろう」ということは、社会システムの中にはなかったことでした。
「百姓は何処にいる?」「どうやって運べばいいの?」「八百屋仲間をどうやってふやせるんだろう?」「これって仕事?」「……?」「……?」
100の問いに答えられるのは皆無でした。
ただ、今の鼓動だけが確かなことだったと思えます。
40年が経ち、「有機」とか「オーガニック」とか「無農薬」といった商品は手軽に手に入る社会的産物となりました。
一緒に「冒険」をはじめた仲間の多くが舞台を降りていきました。今年に入って2つのグループが去っていきました。
あひるの家は10年余り続いた売り上げの減少が「下げ止まったかな?」と思わせる1年でした。
12月に入って2人の青年男子と青年女子が訪ねて来ました。
「この井場さんという人のみかん、どうしてやっているんですか?」と店に入って来た青年男子は、一橋大学大学院生でジャーナリスト志望の青年でした。着眼点が好ましかったのです。
もう一人の青年女子は、40年程前に出版された『みんな八百屋にな~れ』(長本光男・著)を掲げ店に入って来ました。
「こんな八百屋さんをやりたいんです」
とても、とても久し振りの言葉でした。
今は吉祥寺のレストランの軒先を借りて、つながりの出来たお百姓たちの野菜を週1回販売しているとのことでした。『あひるの家の冒険物語』を渡し、年が明けたらゆっくり話そうと約束しました。
ぼく(たち)の冒険物語は終わったけど、あひるの家は未だ届くことのなかった領空・領域へ飛び立つ探検の旅に向かっていけたらと思います。
1年間ありがとうございました。
狩野