「魔物にとりつかれた」ような過酷な夏に翻弄された畑と百姓に会いに行ってきました。
電車を乗り継いで 京王線堀之内で「キテレツファーム」神田くんと待ち合わせ、早速住宅地に囲まれた大きな空き地のような畑に行きました。
ここは神田くんの祖父が昔桑畑として耕していたところで、「おまえがやるなら使っていいよ」ということで、神田くん(32才)初めての畑です。
実っていたのは丸オクラだけで、とうもろこしもミニトマトもインゲンも立ち枯れています。「どちらにしてももう終わりなんだけれど、この夏はとれなかったなぁ」
次の畑への道すがら自宅と庭先直売所と作業場と小さな畑に寄りました。住宅地の中にある無人直売所は好調で、週末には5~6万円の売上のこともあるというのですからビックリです。街の八百屋(あひるの家)としてはショックです。
そこから15分くらいの小比企は八王子一の耕作地域で、3反歩程の畑がありました。10月中旬~下旬予定のレタス・大根・人参・里芋が葉を茂らしています。
次に向かったのは車で10分位、八王子インターのそばの6反歩程のフラットな畑でした。大家さんの敷地のなかにあり、代々農家だったけれど自分はやらない(高校の先生)ので誰かに使ってもらいたいということで、神田くんが借りているということです(ナント無料!)。
ここには秋冬野菜の殆どが植えつけられ、育ち始めていました。ほうれん草・小松菜・大根・南瓜・わさび菜… 「狩野さん、ちょっと手伝ってもらっていいですか?今とっとかないとみんな食われちゃうんですよ」ということで、手のひらサイズのキャベツとブロッコリーについた5ミリ程の虫をとることになりました。15分位でもうダメ!陽射しは強いし腰は痛いし、ギブアップして栗拾いに行きました。そうそう、この夏の稼ぎ頭の予定だった枝豆は「葉ばかり育って豆は入っいなくてダメだから、畑にすきこむ」と言っていました。
さて昼メシです。「なにかあった時に家族でよく行っていた」というパスタの店『ウッディノート』に。これが旨い!のです。私「貝柱とわさび菜のクリームソース」神田「鶏そぼろときのこのトマトソース」をシェアしながら食べました。
「この夏大変だったろう?」「マックスでしたね。ともかく毎日毎日今日は体がもつんだろうか、とか不安がよぎるんだけれど、畑に出たらやるしかないんでやりましたね」「すごい日々だったけど。灼熱の舞台の上で全力で踊っているみたいで、それはそれで面白かったかな。2回熱中症で倒れたけど」
「農業はみんなそうだろうけど、有機農業は特にこうやったらうまくいくという正解がないんです。そこが面白いんだけど」「有機農業はやっている人が少ないし、個々人がやってるから各々の経験値を寄せ合うことがないので、そんなことを伝え合うネットワークをつくっていけたらと思ってるんです…」
モチベーション高し!「今度もパスタ食おう」ということで駅まで送ってもらいました。
9/27電車とバスを乗り継いで2時間余り、神奈川県愛甲郡愛川町の北原瞬くん祥ちゃんの『けのひ農場』に行って来ました。
庭先で生落花生の水洗いとじゃが芋の泥落としをしている祥ちゃんとスタッフに挨拶をして、早速鶏小屋を覗いてみました。近づくと、餌をもらえると思って47羽の殆どが金網越しに集まってきて「クレ!」「クレ!」と鳴き声をあげる。草をあげると先を争って食べています。「もう5年位になり、1日に2~3個しか卵を産まなくなったので さてどうしたものか考えているんだ」ということです。
トラックに乗って借りている畑16ヶ所を巡りました。2反歩から8畝(反の1/10)1番2番と札がたっています。「1番から6番までの畑は水はけも悪いし日当たりも悪いし、傾斜地もあって野菜がうまく育たないんだけれど、9年前にここに入植した時は紹介されたものを断るなんて立場になかったからなぁ」
どの畑も草が伸びていて、手を入れられていないのが見受けられるのです。
「この夏スタッフも半分になって、その割には販売が好調で、ともかく出荷することに追いまくられていたなぁ。今は燃え尽き症候群みたいな感じだな。間に合わないので秋冬野菜はあまり期待しないでください」と言う夏に5キロ瘦せたという北原くんは、やつれていました。
家に戻り祥ちゃんと一緒にお蕎麦屋さんに行って昼メシです。
「この夏、初めて百姓やめようかと思ったよ。夜8時くらいまで仕事に追われ そこから“せめてゴハンは”と思って急いで作るんだけれど9時過ぎになってしまって、みんな言葉も少なく重い空気が漂う毎日だったなぁ。暑くなる前にと朝は4時頃に起きるんだけれど、そんなの続かないよね。百姓やめれば楽になるのかなぁと思ったよ」 「オレもさぁ 食欲がなくなって、それでも食わなきゃって配達の帰りにスーパーで惣菜を買ってきてみんなで食べるんだけれど、ある日ピザだったんだよ。自分で買ってきたんだけど“ピザかよ”って嫌になっちゃったなぁ」 「子どもたちが植えた生姜も、草刈りが出来なくて子どもたちからはブーイングがでるし、あの時の種代と時間で温泉も行けたし 海にも行けたしと思ったんだよな。もう勝手に草は伸びてたら…と、今は思っているよ」
蕎麦屋を出るときに、お店の人が大きな袋を2つ渡してくれたのです。そばとうどんの切れ端とそば殻が入っていて鶏の餌に混ぜるということです。祥ちゃんは、なすと冬瓜ときゅうりとおくらの入った袋を渡していました。米農家と牛飼いの人たちとも野菜や卵の物々交換をしているとのことでした。
「年内野菜もってあひるに行きますから、2人で!」と約束し固い握手をして、またバスと電車に乗って帰ってきました。
秋の果物がはじまりました。極早生みかん・種無し柿・ぶどう・梨・りんご。野菜は10月中旬ころには安定的に出てくる予定です。
百姓たちの夏は苛烈でした。新米の刈り取りが終わった10月下旬~11月初旬には、栃木県鹿沼の鈴木章さん(米・野菜)、田島さん(里芋・野菜)、高田さん(卵)を訪ねて行こうと思っています。
皆さんの夏はいかがだったでしょうか?
畑だより ―たたかいすんで 日がくれて…畑に秋がやってきた―
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