実は、太平物産の「表示偽装」の問題が発覚する数ヶ月前に、小さなエリアでこれと同様の事態が生じていました。
山形・ゴールド興産という小さな肥料会社が製造した有機質100%の肥料に、硫安という化学肥料が配合されていました。
畑の一部にこの肥料を使用していたのが、北海道富良野の阪井君です。
ゴールド興産や主管する北海道農水省と、「責任」を巡って激しいやりとりを繰り返してきました。このことがきっかけで、農水省がJA全農に「肥料成分の調査」を指示し、今回の太平物産の「表示偽装」が発覚したと思われます。
かといって、農水省が責任を認めた訳でもなく(反対に阪井君には厳しい対応をしたとききます)、ゴールド興産が補償に前向きだということもなく、阪井君一人がその損失をこうむっている現状です。
阪井君のことは、あひる通信で何度も登場しているのでご存知の方もいらっしゃると思いますが、35年前23才であひるの家にやってきて、半年間リヤカー八百屋をやって、その間有機農家に出掛け有機農業のイロハを学び、富良野に戻り有機農業を始めました。
北海道に渡った若者たちの多くが、阪井君を頼って訪れ、牛飼いや羊飼いや有機の百姓になっていきました。いわば、北海道の有機農業のフロントランナーです。
「農薬・化学肥料の多用と大規模農業」によって衰退していく土と百姓を見てきた阪井君は、「土を活かし、百姓を生かす有機農業」に希望を抱いてやってきました。
ところが今回の事態にまきこまれ、自ら「認証有機」を取り下げ、出荷する農産物も「有機農産物」→「農薬不使用・化学肥料使用」に変更しました。あひるの家取り扱いの南瓜・玉ねぎ・赤玉ねぎ・メークインも、そのように変更しました。
実は、ここからが問題の本質です。
1)向こう2年間、阪井君の畑は有機認証の資格を失うことになります(化学肥料を使用したから)。
2)既に、自らの判断で学校給食への供給を中止し、冷凍南瓜としての原料供給も止めました。更に、70%以上出荷している関西の会社(有機農産物専門流通)が、来年は取り扱ってくれるかといった経済的な見通しを失いました。
3)35年以上続けてきた有機農業を理不尽に奪われた失意と、後継者としてはじめていた息子たちのこれからの不安。
まだたくさんあるのだろうけど、「偽装」がもたらした損失は計り知れないものがあります。あひるの家創成期、ポラン広場のネットワークづくりをともに担い、家族ぐるみのつき合いのある阪井君が苦境にたたされていることを思うと辛いです。
買うこと、食べることで応援していきたいと思います。