Author Archives: kano

あひるの店先から

5月2829日、春爛漫の福島の海と山に行ってきました。
あまりの陽射しで顔と腕はマッカッカで、「朝から酒飲んでんの」と間違われる位。でも、「海と山イッター!」の気分爽快です。
朝700東京発のいわき号に乗り、1000着。はじめに向ったのは小名浜漁港にある「出荷前検査場」。休日にもかかわらず案内してくれた中野青年(担当職員)。
「20魚種(海の底にいる魚)は出荷禁止で、その他は検査して25ベクレル/kg以下だと出荷している(国:100ベクレル/kg、県:50ベクレル/kgを出荷基準にしている)」
「それでも、福島の漁港にあがったというだけで、売れないか買いたたかれる」
「漁師や漁協には補償金が出ているけど、仲買い・倉庫業・加工業・運送屋・冷屋など、漁港を支えてきた人たちには全く補償はないので、廃業が続いている」
「他の地域は検査していないのだから、検査してある福島は安心よね、とならないですかね」
と、幾種もの検査器を前にため息をもらしていました。
検査場の前の観光スポット『ららミュウ』には、何軒もの魚屋さんがいせいのいい声をあげ、魚貝を売っていました。「福島産」のものはゼロでした。
次に向かったのは薄磯地区。3.11のあの時刻(1446)に村にいた人の半数(150名)が亡くなった地域。10数台の重機が整地・かさ上げ工事を行ってホコリっぽい。
10mのかさ上げ地で待っていてくれたのは、語り部の大谷さん(60才位)。「重機の音に負けないようにハンドマイクで話します」と話しはじめたのは、2011.3.11.14351515位の30分間体験したことでした。
「第一波の津波は全く気付かなくて、チョット海を見てくると家から200mのところにある
4.7mの防波堤に登ったら、水平線まで海底が黒々と見え、全身が総毛立ち、家に駆け戻ったのだと思う。というのは、今なお、家にどう帰ったのか思い出せません」
「あと7分で津波がくるとラジオが言っていたのを聴いたように思うけど、裏の神社の10段目の階段でふり返った情景までの30分間の記憶もないのです」
「これを話せるようになるのに3年かかりましたが、神社の10段目でふり返ると、女房が犬2匹をかかえ、93才のおばあちゃんの手を引いて、70才のおばちゃんと階段を登ろうとするところでした。もうすぐ後ろには、黒々とした獰猛な海水がおしよせていました。私は“手を離せ!”と何度も叫んだことは、はっきり覚えています」
「後できくと、近所の子供を背負って高台まで駆けていたり、そのおばあちゃんも途中まで背負ってずりおちてしまったことなど聞かしてもらうのですが、記憶になく、“手を離せ!”という自分の声だけが残っているのです」
海を見ながら、10mの盛り土の上で陽を燦々とあびながらの1時間は、あっという間でした。
たくさんの話しをしてくれた彼の最後のメッセージは、「語れるのに3年が経ちました。語ることで、聞いてもらうことで、私の肩にのしかかっていたものが軽くなっていくようです。今回、皆さんにお渡しするお土産はないのですが、私の肩の荷を少しずつ持って帰っていただけたら嬉しいです。軽くなった分、村の再建に向かう力が出るような気がします。また来てください」と、握手をして別れました。
と言うことで、今回の福島ツアー“海編”はここまで。次号(?)、“山編”です。

畑だより ―ともかく野菜の成育が早すぎる!―

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「10日から2週間早い」と、連日の暑さでへばり気味の栃木鹿沼の鈴木章さんは、少し困惑気味に語ります。「不安」を感じているのだと思います。
「不安」が外れることを願いつつ、章さんの畑の便りから。
ブロッコリー・カリフラワー・キヌサヤエンドウ・いんげん・そら豆・スナップエンドウ・春白菜・セロリと、豆・サヤの季節を彩っています。
1週間位経つと、枝豆・きゅうり・トマト・オクラ・南瓜と、夏野菜が早くも出荷が始まります。豆・サヤは終了に向います。
神奈川愛川の北原君はマンパワーを動員して、夏野菜の定植に追われています。今は大根・かぶ・長ネギ・みさきキャベツ・ズッキーニ・そら豆・レタスと、少な目の出荷です。
ナスを除いて(6月中旬?)夏野菜はそろいました。アスパラ・とうもろこし・ししとう・赤玉ねぎ・にがうり・モロヘイヤ・つるむらさき・パプリカなども順調にはじまっています。
果物は、人気の栃木・浜田さんのブルーベリー、千葉山武の小玉西瓜、熊本肥後のメロン各種、沖縄石垣島のパイナップル、バナナ(ペルー)、キウイフルーツ(ニュージーランド)というところですが、和歌山・内芝さんのびわは雹(ひょう)害で大半がやられ、出荷できるのはわずか5%位ということです。
「過酷だなあ」と思い、「オレだとすぐ百姓やめちゃうだろうな」と思わせる事態が、毎年毎年起こっています。この夏、どんな事がおこるやら。
ともあれ、早い夏野菜の出荷がはじまりました。

梅・らっきょうご予約承り中

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あひるの家販売ランキングbest3にいつもランキングしているのが、王隠堂さんの【有機梅干】です。「この梅干おいしいのよね」と、まとめて買っていかれる方が何人もいます。たしかに塩もいいし、しそもいっぱい入っているけど、やっぱり梅が旨いんだと思います。
奈良・西吉野の山中、標高400mのところにある王隠堂さんの梅林の土は、ふっかふかであったかそうです。それと、王隠堂さんの家はその名の通り、南北朝時代後醍醐天皇をかくまったことで名字帯刀を許された由緒ある家系で、その頃から梅を栽培していたそうですから、もう歴史的産物ということになります。歴史と時代が合体した産物が、王隠堂さんの梅です。
子供が大好きな梅ジュース・梅シロップ漬けは、作るのカンタン、1ヶ月位から飲めるので、この夏中楽しめます。大人が大好きな梅酒も作るのカンタンというか、ただ焼酎と梅を合わせるだけみたいなもんです。3ヶ月位でおいしくいただけます。
誰もが顔をしかめながら、それでも1年中食べている梅干は、ちょっと手間がかかりますが、その分自家製梅干は旨いです。夏を越えた頃から食べ頃になります。
最近漬ける人が急増しているのがらっきょうです。甘酢漬け、塩漬けがありますが、パリパリで食べたい人は23日漬ければOKです。味がしみて少しやわらかいのをお好みの人は1ヶ月待ってください。むきながら味噌なんかつけて食べる生らっきょうもおすすめです。
漬け方レシピ配布中。「な~んだ、これならわたしにもできる」と思った人、ご注文ください。期間はわずか2週間、1kgからやってみよう。

【有機青梅(梅酒・梅シロップ用)】 1kg 1,150円 入荷期間:66()618()

【有機青梅(梅干用)】 1kg 1,150円 入荷期間:620()72()

【らっきょう】 1kg 640円 5kg 3,000円  茨城・小沼さん 農薬・化学肥料不使用 入荷期間:613()3週間位

お渡し希望日の1週間前までにご注文ください。 

5月14日(土)浄水器のゼンケン ~ 水と風のフェア ~

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春~夏 ゼンケン浄水器ロングランSALE!
ゼンケン浄水器本体・カートリッジ全品1020OFF 9月末まで

高性能・低価格で定評のある、浄水器メーカーゼンケンの全ての浄水器(本体・カートリッジ)が対象のロングランセールです。「カートリッジの交換時期はまだ先」という方も、この機会に12台まとめて買い置きするのもおすすめ。
当日はゼンケンスタッフ西澤くんが、おいしい水の試飲と塩素含有テストをしながら説明販売します。

―はじまりは水だった

1970年に入ると、高度成長にともなう矛盾が全国各地で起こってきました。琵琶湖の水質汚染は、その象徴的なものでした。工業排水、農薬、合成洗剤などが川から湖に流れこんできました。
「子供たちの未来のために」と立ちあがった消費者や若者は、「合成洗剤を止めて石けんを使う」運動を始め、それをサポートしたのが(株)太陽油脂(パックス製品)で、「農薬を使わない農業」を応援する産直運動がはじまり、それをサポートしたのが大地を守る会やポラン広場などの若者グループでした。
日々使う水道水の水質汚濁に対しては、管理は行政にあるので、なかなか手立てがありませんでした。
そんな時、「蛇口から安心安全な水を」と、日本初の浄水器メーカーとして登場したのが(株)ゼンケンでした。
石けんも有機食品も浄水も、40年余り前の消費者の方々や、それをサポートする企業があったから、今に至っているのだと思います。

―浄水能力は群を抜いています―

40年の間にゼンケン浄水器は様々な改良を加えてきました。一層式を二層式にしたり、重くてかさばっていたのをコンパクトに軽量化したり、ダサかったデザインをオシャレにしたり、蛇口取付型や風呂水浄水、シャワー浄水など用途も広げてきました。
変わらなかったのは、その浄水能力の高さでした。
・残留塩素、トリハロメタンなどの化学物質の徹底除去
・サンゴ、活性炭などを使った、おいしい水の追及。そして持続性
どれをとっても、他メーカー浄水器の能力をはるかに上回るものです。使うならゼンケン浄水器だと思います。

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夏がくる!クーラーが苦手(イヤ!)な人 この風は体感した方がいいよ!
新発売 ゼンケン扇風機【DCファン】お披露目キャンペーン!

長い長い蒸し暑い夏がきます。皆さん、暑さ対策どうしてます?何かしなけりゃ耐えられない暑さですが、「クーラーの冷房は涼しいんじゃなくて冷たいのよね」と苦手(イヤ!)な人は多いんじゃないでしょうか。そんな人に涼しい風を運んでくれる多機能ファン(扇風機)が出来ました。

ゼンケン【DCファン】定価30,000円 → キャンペーン価格27,000

快適な風  「そよ風のようなやさしい風」から「遠くまで届く安定した風」まで、風力を9段階で調節!
静か  羽根の特殊な加工で送風時の抵抗を減らし、静かな運転音を実現!
垂直送風  下向きから真上まで角度を調整できます。真上に向ければサーキュレーターとして一年中活躍!
省エネ  消費電力は従来の扇風機の約60%の省エネ(電気代約9.7円/月)を実現!

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~~~ゼンケンスタッフ西澤理志君(25才)からのメッセージ~~~

ゼンケン入社3年目です。本当はグループ会社ニッケンに入りたかったのですが、こっちになりました。高校時代ラグビー、大学時代少林寺拳法をやっていて、ニッケンのプロテインのお世話になっていたので、ニッケンかなと思っていました。でも、ゼンケンに入って“水”の大切さを知り、それを広げていく仕事を気に入っています。
休みの日は筋トレ、ランニングなどで体を動かしています。週一回はトコトン体を追いこまないとスッキリしません。そして温泉です。
514日(土)は浄水器と扇風機のご紹介をさせていただけたらと思います。よろしくお願いします。
当日に限り浄水器(本体)、または扇風機をお買い上げ(ご予約)いただいたお客様には、ゼンケンより1,000円キャッシュバックさせていただきます。ご利用ください。

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【有機パクチー】が大人気?の茨城・ハーブスマンの【ハーブ苗】【野菜苗】ご予約承ります

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【スイートバジル苗】【青じそ苗】【ミニトマト苗】【ピーマン苗】… あひるの店先にもハーブ&野菜の苗が並びはじめました。栽培しているのは、茨城・行方の福山君(通称ハーブスマン)です。
インド放浪中に行き倒れた福山君は、見ず知らずの人の家で介抱され、道端にはえている草花を煮つめた汁を飲まされみるみる回復、命びろいをした体験でハーブのチカラに目覚め、帰国後ハーブ栽培をはじめたのです。命の恩人(?)ハーブに寄せる愛情はひとしおです。
福山君から届いた苗は、茨城・ハ-ブスマンの農場内の山で自給した腐葉土や堆肥を使い、特製の土で大切に育てられた苗です。健康に育てられた苗は、植え替えてからの成長ぶりに違いがでます。また香りも高く、丈夫で家庭でも上手に育てることができます。庭やベランダにハーブを植えて、植物とのコミュニケーションを楽しみましょう。
只今【ハーブ苗】&【野菜苗】予約注文書配布中。入荷期間が異なりますので、ご都合に合わせて1週間くらいの余裕を持ってご予約ください。

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春爛漫!5月28日(土)~29日(日)福島の海や山に出かけよう!参加者募集中

福島県いわき市小名浜・薄磯漁港を訪れるスタディツアーに参加します。
「今なお地震・津波・火災・放射能汚染・風評被害・避難生活など、幾重にもわたる困難は続いています。1人でも多くの人に、この現状を知ってほしいのです」と、案内してくれる語り部の阿部忠直さんのメッセージです。
「特に漁業、漁師は先行きの見えない中で奮闘している姿を見て欲しいです」と語ります。
「魚の出荷前検査場」や7mの高さの防潮堤、被災地薄磯地区、仮設・災害公営住宅などを見たり、聞いたり、食べたり、感じたり、考えたり… 海風に吹かれながら過ごします。

いわき市街から30分の山間にある『農家レストランぷろばんす亭』のおばちゃんたちが、地元食材をふんだんに使った盛りだくさん料理でおもてなししてくれます(2年前国立に催した時、大好評でした)。
宿泊は上三坂古民家『OJONCO館』で、修学旅行気分の雑魚寝。翌朝、散策の後で心のこもった朝食をいただき、OJONCO館に戻って交流ミーティング。
そして、標高700mの芝山自然公園山頂での3町村合同山開き大バーベキューイベント(100名位)に合流。見渡す限り新緑にあふれた山々の中で腹いっぱい食べて飲んで、村人たちと交流します。

■日程・行程

528日(土)

645 東京駅集合 ~ 700 バスで出発 ~ 1000 いわき着 ~ 1030 スタディツアー出発 ~ 1630 いわき着 ~ 1700 温泉入浴 ~ 1900 『ぷろばんす亭』夕食 ~ 2100 OJONCO館泊 ~ エンドレス

529日(日)

起床・散策 ~ 800 『きのことマサ』朝食 ~ 930 交流会 ~ 1100 バーベキュー大交流イベント ~ 1500 いわき出発 ~ 1830 東京駅着・解散

■参加費 21,000円位(往復バス・スタディツアー・マイクロバスレンタル・運転手さん・温泉・夕食・宿泊・朝食・バーベキューイベントなど、全て含みます)

■締切 515日(日)

■お申し込み あひるの家 042-575-9049(狩野)
         福島とつながる種まきネットワーク 042-573-4010  090-7213-0929(遠藤)

■定員 20

※お申し込み後のキャンセル料は、前日:半額、当日:全額となります。

※お申し込みいただいた方に、参加費の支払い、ツアーの詳細をお知らせ致します。

いこうよ!福島へ!

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畑だより ―苗づくり、種まきでいそがしい。ということは…―

45月出荷の春野菜、67月出荷の夏野菜の種まきや、ハウスの中で育てた苗床を畑に移す定植作業にお百姓たちは追われています。
ということは、畑に育っている野菜は何もなく、あるとしても貯蔵しておいた人参・ごぼうなどの出荷があるだけです。
冬を越したストック野菜も、北海道じゃが芋・玉ねぎをはじめ、白菜・里芋・蓮根・人参・小松菜・ほうれん草などが終了に向っています。
出荷野菜の少ないこの時期は、お百姓にとって1年で1番のんびりできる時で、温泉などに出掛けることも多いようです。
ということは、八百屋さんの店先に並ぶ野菜が少なくなり、お客さんから「アレもない、コレもない、本当に八百屋なの?」と言われることが多い季節でもあります。
「ナイ、ナイって言わないで、アルものを買ってくれよ」ということで、春だから始まった野菜をお知らせします。
まず、沖縄・徳之島・鹿児島など南方から、新じゃが芋・新玉ねぎ・スナップエンドウ・アスパラガス・プチ空豆・ミディトマト・インゲン・ピーマン・キュウリ・パプリカ・ニガウリ・ズッキーニ・チンゲン菜などが始まっています。
44日が海開きというだけあって、南の島々では初夏の装いで夏野菜のラインナップがスタートしました。
この辺(関東)でも、かき菜・菜の花・のらぼう・ラディッシュ・サニーレタス・春キャベツ・春大根・小かぶ・からし菜・味美菜などちょっと地味で、気温がグッとあがる日があると大きくなりすぎたりトウ立ちしたりと、安定感に欠ける野菜がはじまりました。
こう記していると、「けっこうあるじゃん」と思うのですが、いかがでしょうか。
果物は、柑橘類が甘夏・河内晩柑につづいてグレープフルーツ・黄金柑・夏みかんがでます。りんご(ふじ)・イチゴ・キウイフルーツ・バナナは続きます。ちょっとさみしいなあ。
いよいよ春です。神奈川愛川町の北原君の畑に出掛け、春の息吹きを感じてきます。

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あひるの店先から

あひるの店頭でたいやきやゆいの屋台がもう二度と見られないと思うと、「生き訣れ」のような胸苦しい気分です。
由井君も書いているように、8年前声を掛けたのがつき合いのはじまりでした。

エピソードⅠ ―たくさん話しをきいてくれてありがとう―
「リヤカー屋台でたいやきをやる」ということになった由井君に、リヤカーに野菜を載せて八百屋をはじめた私にとって、それは無条件連帯の旗を掲げるしかない喜びでした。
それも、始めるのが29才と同じ年齢なのですから、何度もお茶を飲み何度も飯を食いながら、たいやきや準備の話しもありましたが、主に私の「リヤカー八百屋経験値」を話したように思います。
辛く、立ち往生していたリヤカー八百屋が、ある時を境に楽しく舞いあがる気分に転換し、「全ての道はリヤカーに通じる」という知見に至ったことを話しつづけ、由井君はきっと「何言ってんだろう?」と思いながらも、笑顔をたやさずきいてくれました。
話したかった「リヤカー八百屋」のことをきいてくれた唯一の人が由井君でした。

エピソードⅡ ―あったかいものを手渡す仕事がしたかった―
その人の仕事やこれまでの人生を、飯を食べたり酒を飲みながら聞いたり喋ったりの集い、名付けて「有機交流電燈倶楽部」を催しているのですが、その第1回のスピーカーは由井君でした。
30名程が集い、由井君は中学・高校でやっていたパンクロックのことや、2度に亘る長期のインドへの旅の話しや、高知の有機農家での手伝い、東京に帰ってから新聞配達、ポスティングのアルバイトやマクロビのレストランでの仕事を経て、たいやきやになった話しをしました。
参加者から、「どうしてたいやきやになったんですか?」のお尋ねがありました。
由井君の隣で進行していた私は、「こいつ、どこまで話すかな?」と思っていたら、由井君が息を飲み、ひと呼吸おいて、「実は…」と話しはじめました。
「母子家庭で、いつも味噌汁とご飯はつくっておいて、団地の窓から妹達と母が帰って来るのを待っていて、買ってきた惣菜を温めて、みんなで、『おいしいね、あったかいね』と言いながら食べている時、いつかあったかいものを手渡しできるような仕事をしたいと思い、それがたいやきやをやった訳です」と応えたのです。
由井君の揺らぎのない心根を見せてもらったシーンでした。

エピソードⅢ ―時代がおわり、時代がはじまる―
おいしさと笑顔で、たいやきやゆいは口コミでお客さんがふえ、店先を貸してくれる所もでてきました。
その頃、度々手伝いに来ていた可愛い女の子(人)が洋子ちゃんでした。
「マクロビのお菓子を作っているパティシエです」と由井君に紹介してもらったのだけど、「マクロビ?パテシエ?」がわかりませんでした。
洋子ちゃんも勤めを辞め国立に引っ越してきて、家でお菓子づくりをはじめます。センス・技量・丁寧・おいしさ、どれも優れた完成度で、あひるの家ではさっそく販売させてもらうことになりました。
発売前、「なんでミモザなの?」ときくと、「春の今の花だし、由井君と出会ったのが4月なので」と洋子ちゃん。これは販売に力が入るってものですよね。
そして数年前、「たいやき100年メモリアルイヤー」が訪れ、TV・新聞・雑誌・イベントに引っぱりだこの大盛況。店先の屋台は、はじめから終わりまでお客さんに囲まれている状況でした。
そして夏、新たな大ヒットメニュー「かき氷」の登場です。
炎天下、店先のベンチに座ったり、道端に立ったりしてかき氷をかきこむ姿は、リゾート気分満点でした。
そして、「仕込み場と店舗をかねたお店」がオープンするのです。
「あそこはゼッタイムリだろう」という私の助言(?)を見事に覆して、「売切れゴメン!」の大繁盛店になっていくのでした。
この7年間、「期待を上回る結果を出すのがプロフェッショナル」だとしたら、由井君、洋子ちゃんはプロなんだと思います。

さて、5月になれば赤ちゃんも産まれ新しい生活がはじまり、仕事も新しいやり方になり、スタートということになります。
あひるの家は、伴走者としてこれからもおつき合いさせていただいて、楽しい夢を育ませていただきたいと思っています。 

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畑だより ―寒いので暖かいところの話しを―

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暖冬だったので、まだ茨城・栃木・神奈川など近辺の畑から野菜が出てきていますが、本格的な寒さが来ると、葉物類を除いて凍みて終了となってしまいます。
大根・キャベツ・ブロッコリー・カリフラワー・セロリ・レタスなど全て、暖流が流れこんでいる愛知県渥美半島の天恵グループからの出荷になります。
あたたかい海流と強い海風のせいで、寒いけど霜も雪もなく、おいしい野菜が育ちます。
そこで、あたたかいところの話しをします。
「なんで冬なのに、あひるさんにキュウリやトマトがあるの?」という声がきかれます。
プライスカードをごらんください。沖縄宮古島・石垣島・本島などと記されています。この正月25℃の日もあった沖縄は、早くも春~初夏に向かっています。
沖縄の島々のお百姓たちとつながったのは15年程前です。
それまでポラン広場グループは、鹿児島徳之島まではつながっていたのですが沖縄の情報は全くなく、産地形成ができませんでした(インターネットはなかったからね)。
那覇で小さな宅配グループができ、品物を送っている中、「各島に有機でやっている百姓がいるから来てくれよ」と、何度も催促がありました。
ポラン広場グループの農産担当とネットワーク担当の私が、45日で本当2カ所・宮古島・石垣島・小浜島のお百姓を訪ねていきました。9月下旬だったので、「まだ泳げる、ソーキソバが食える」と、水着をバックにつっこんで出掛けました。
集会所には10人程の人たちが集まってくれていて、ポラン広場のことや農産物の取り扱いのことなどを、スライドなどを使いながら話させてもらい、毎回12人関心のある人が残り、そのまま畑を見せてもらい、これからの作付の約束をして次の島に向かう旅でした。
まだ夏ということもあって陽射しは強く、作物は勢いが良く(トマトは10段目までとれる)、土は黒々と輝き、「沖縄はアツイ!」と思ったものです。
畑より熱かったのは百姓でした。
出発間際の機内まで入ってきて、「オレの友達がスチュワーデスやってっから大丈夫だよ」といい、両掌を握りながら話しつづけた宮古島。
「ハブがいるからきをつけて」と言いながらパイナップル畑にどんどん入っていき、自分は腰まである厚いゴム長をはいている。「どう気をつけたらいいんだよ」と腰が引けた石垣島。
「明日島祭りなので、ちょっと待ってて」と体育館で子供たちに踊りを教えていた青年百姓の靴下の指に穴があいていて、窓から吹きこむ海風と見守る先生の美しかった小浜島。
出荷先のあてのないまま有機農業をやっていた彼等にとって、私達の訪問は恋い焦がれた出会いだったのかもしれません。35年前ポラン広場発足時の、一人一人の百姓たちとのドラマチックな出会いを彷彿させるものでした。
以降、小さいながら北海道~沖縄までつながるポラン広場ネットワークができるのでした。
と、今回のお話しはここまで。
寒くなって甘味のました野菜を食べて、冬を乗り切りましょう。

「今年も一年間ありがとうございました」スタッフご挨拶Part3

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出会いは一瞬 出会えば一生

11月下旬に催した福島イベントに来ていただいた若き有機農家が最後に述べた言葉が、「出会いは一瞬。だけど、出会えば一生のおつき合いになれる」でした。
これまで5年、28才の青年が紡ぎ出した言葉は感動的でした。
少し前に観たTV番組で、「2030年、地方自治体の49%が消滅する」という調査報告がされていました。
元々、人口や経済活動が集中する都市にはコミュニティーは存在しないので、「消滅」によって日本のおおかたのコミュニティーが消滅することになる訳です。
ところが、強制的(震災、原発事故)に消滅させられた福島では、青年たちが現在~未来に向けて、「希望」を育んでいます。
今年何度か福島を訪れ、何人かの人と出会い、そして励むことを学んだと思います。学んだことを仕事に生かしていきたいと思います。
あひるの家は38年目を迎えます。
あひるの家がつづけてこられた原動力は、今もかつても「販売を通じて、その向う側に行きたい」という気持ちなのではないかと思っています。
「向う側」というのは、育みあうコミュニティーであり、育むのは「希望」だと思うのです。
今年もオシマイになります。ありがとうございました。
新しい年は、皆さんと一層出会えるあひるの家でありたいと思います。               (狩野)