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北海道富良野市麓郷・阪井くんからの手紙2017

39年前、まだ始まったばかりのあひるの家で半年間リヤカー八百屋をやっていて、あひる通信『あひるの家の冒険物語』にもたびたび登場している、北海道富良野麓郷(ろくごう)の阪井くんから、生産者便りが届きました。

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ももんが便り2017

ここは北海道のへそ呼ばれる富良野盆地の少し曲がった山の中。森に囲まれた富良野の麓郷。鹿、キツネ、タヌキ、ヤマバト、カラス、リス、モモンガ、時には熊などなど。
彼らに目を光らせ、たまには目を細め、野菜達の生長を見守っています。
昨年は50年に一度と言われる台風、大雨が続き大変な一年でしたが、帳尻合わせのように今年の7月の上旬までは穏やかな天候に恵まれた日々が続きました。
適度な雨量も7月8月の高温により、野菜の肥大期には水分不足の干ばつになってしまいました。
自然は、なかなか人間の都合通りには、いかないものですね。

甲斐信枝さんの『きゃべつばたけのぴょっこり』(福音館書店)という絵本の中に

午前五時、山の端から幾条もの朝の光が矢のように空を走る。
きゃべつの葉先の夜露の玉が、虹色の宝石のようにきらめく。

甲斐さんの感性はとてもすてきです。甲斐さん流に言う“お宝”は農の中にもいっぱい。
雪の中のハウス、耕した土が白煙のごとく、蒸気が舞い上がり大地の目覚めを感じた時…
朝もやの中、玉葱畑に張りめぐるクモの糸が朝陽の中で水滴を集めた絹のじゅうたんに見えた時… etc.
その瞬間が“ワクワク”するのです。農業もなかなかすてきな商売です。
Uターン6年目の息子にも昨年子どもが産まれました。そんなことを感じはじめているようです。私は孫を見ながら目を細めています。
そんな北の大地の生活を想像しながら、おいしく育った野菜達を食べていただけたら幸いです。

2017 39回目の感謝の秋

富良野 百・我(ももんが) 阪井永典

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元ボクサーにして元あひるスタッフ、有機百姓歴39年の阪井くんは北の大地の詩人でもありました。
阪井くんの【じゃが芋】【玉ねぎ】【南瓜】の直送便がさっそく届いています。
来年2月に東京に来るときは、また一緒に飲みましょう!

畑だより ―穫りの秋といくか?―

いよいよ北海道の大地からの野菜がはじまります。
北海道のヘソとよばれ、TVドラマ『北の国から』の舞台になった富良野麓郷の阪井君から出荷開始です。
キタキツネ・タヌキ・リス・モモンガ、時には熊という野生動物たちが生育するエリアに阪井君の畑はあります。
山間の畑に行った時、熊の足跡とフンがありました。「まだ新しいから今までいたんじゃないかな」と笑顔で語った阪井君は、カーラジオのボリュームをマックスにして畑仕事にとりかかったのです。私は「いつ熊が出てくるのか?」と鳥肌をたてながら、畑と森の境目あたりを見張っていました。慣れているとはいえ、「畑仕事に夢中になって、ふっと思った時、後ろを振り向けないんだよね」と語ります。
20才代前半にあひるの家のリヤカー八百屋を半年間やってからだから、有機農業歴は38年位になります。「阪井もおれも若かったなあ」とつくづく思います。
玉ねぎ・じゃが芋・南瓜、もしかしたら小豆・手亡豆・小麦が出ます。
秋はやっぱり果物です。甘かったり酸っぱかったり果汁が多かったり、疲れた体をいたわってくれます。
りんご・ぶどう各種、桃・梨・メロンと秋物がはじまり、バナナ・キウイフルーツ・小玉西瓜もでています。
果物は7月の高温少雨で全体に小粒ですが、甘いです。
野菜は全般的に少な目になっています。
7月の高温・雨降らずの干ばつ、一転8月の降雨・日照ナシで生育が難しく、病気もでてきています。
「昨年は台風、今年はコレ」と、気候の変化に翻弄されています。
元々、9月は夏野菜が終わりに向かい冬野菜がまだまだという端境期でもあるので、「野菜がナイ!」「ある野菜食べて!」のやりとりが店頭で繰りひろげられることになりそうです。
そうは言っても、北原君のナス・キュウリ・オクラは抜群に旨いし、れんこん・冬瓜・里芋・さつま芋と新物も出てきたし、結構料理の幅がもてそうです。
まだまだ暑い!すっかり疲れた体を、しっかり食べて甦らせましょう。
あっ、今ファックスがきました。栃木・鈴木章さんから新米コシヒカリが出ます。

畑だより ―ウ~ン、この夏もキビシイか?―

北原くんのことです。
7月18日(火)、国立でも激しい雨と風と絶え間ない雷が2~3時間にわたり鳴り響いた日です。
「待ちに待った雨が降ってよかったなあ。あとで北原に電話してみよう」と思っていた矢先、メールが入ったのです。

「雨だ!よかった!と昼飯を食べていると、突然屋根をたたく激しい音がし、窓もガタガタと揺れはじめたのです。
外を見ると大粒の雹が雪のように積もりはじめ、横なぐりの風が吹きあれていました。
おさまってから畑を見にいくと、トマト・キュウリ・インゲン・ナスなどは支柱ごと飛ばされ、重なり合っています。チンゲン菜・ツルムラサキ・空芯菜・さつま芋・里芋などの葉はちぎれてしまっていました。生き残ったと思われるのはオクラと枝豆だけのようです
今年もかよ。なんでおれの畑だけなんだよ。道1本向こうの畑は全く大丈夫だぜ。どう気持ちを落ちつかせたらいいかわからないでいます。
昨夏は台風、今年はコレかよ。もうイタリア・フランスに行くわけにはいかないし、どうしたらいいか、片付けをしながら考えていくけど、2週間位かかりそうです」

というものでした。
8月6日(日)の「北原君の夏野菜これでドウダ!フェア」は、今のところ不確定です。
あひるの家が出来ることは「売る」ことなので、北原君の畑にある野菜を目一杯とっていきたいと思っているので、よろしくお願いします。

他のところはどこも水不足、高温で苦しんでいます。
青森弘前・伊藤さんからはすもも・ブルーベリー・りんご【夏の紅】【夏緑】【祝】が7月末~8月に入荷はじまります。りんごは例年より2週間位前倒しになっています。青森弘前でも連日30℃をこえる高温のためです。
栃木鹿沼・鈴木章さんからは、ホクホク甘い!申し分なしのマロン南瓜、味の濃い枝豆・ツルムラサキ・モロヘイヤ・キュウリ・長ネギ・インゲン・オクラ・ズッキーニ・ニガウリ、栃木鹿沼・田島君から自慢のトマト、絶品ナスが入荷しています。
朝食べると一日元気のでる果物は豊富で、桃・すもも貴陽・パイナップル・西瓜・メロン・ぶどうデラウェア・キウイフルーツ・バナナ・ブルーベリーなどが出揃い、下旬からりんご(1品種1回入荷)もはじまります。
これだけ暑いとお米に虫がわく場合もでてきます。買われたらなるべく冷蔵庫の野菜室で保管してください。
もし、虫(コクゾウムシなど)が発生していたら返金いたしますので、お申し出ください。

今日(7月19日)梅雨明け宣言が出るそうです。
ということは、これから真夏が来るということです。長い長い暑い夏になりそうです。最大限の暑さ対策で夏本番を迎えましょう。

畑だより ―夏野菜・果物のハイシーズンがはじまった!―

「雨がふらない」「畑に入ると土ぼこりがたつ」「水を求めて虫たちが畑の野菜に取りついている」「水分を吸われて、しおれたり元気がない」「たのむから畑の土にしみこむ程の雨がほしい」・・・・・・と、打つ手がない状況が続いています。
そんな中、気温が高く雨が少ないことでおいしくなっているのが果物です(全体的に小ぶりですが)。
夏人気No1の桃が、山梨一宮・久津間さんから届きます。15品種の桃が7月初旬~8月中旬まで、1品種2週間位の期間で出荷されてきます。
少し遅れて、蜜のしたたる貴陽(すもも)もでます。すももは大石早生・ソルダム・サマーエンジェル・太陽など、食味・色味のちがうものが楽しめます。
野生種の甘酸っぱいガラリ(すもも)が、奄美大島から届いています。
シャキシャキ甘い西瓜は小玉、マダーボール、大玉と続きます。
栃木・浜田さんのブルーベリー、千葉銚子の萩原さんからタカミメロン、ラブコールメロン、グランドールメロンなど、実が緑色だったりオレンジ色だったりのメロンがでます。いずれも甘い!です。
沖縄石垣島・平安名さんから、甘味が濃く酸味のあるパイナップルが大・中・小ででています。
オーガニック&フェアトレード果物は、キウイフルーツ(ニュージーランド)、バナナ(エクアドル)が入荷中です。
「どれを食べようかな」楽しみがふえてきました。
野菜です。
直送野菜は栃木の田島君からトマトが始まりました。価格も半分位に下がりました。
同じく栃木の鈴木明さんからはきゅうり・枝豆・インゲン・モロヘイヤ・ツルムラサキ・マロン南瓜が届いています。
神奈川の北原君は全品露地栽培(実はお金がなくてビニールハウスをたてられない)なので、大幅に夏野菜が遅れています。8月6日(日)には夏野菜フェアを企画中!今はじゃが芋5種・人参・ズッキーニ・グリーンセロリと地味系の入荷です。
いちごの竹村さんから新ニンニクがでます。いちごの前にニンニクを作ると、虫と病気が出にくいということです。
あとは、なす・みょうがを除いて、夏野菜が揃いはじめました。産地も沖縄・九州から関東に移ってきているので値段が下がってきています。
葉物類はほうれん草・小松菜が減少して、ツルムラサキ・モロヘイヤにバトンタッチ。そうそう、とうもろこし旨いです。
蒸し暑い日がはじまっています。ちゃんと食べて夏バテにならないようにしましょう。
雨よこい!

畑だより ―新物野菜が出てきます―

G.Wをはさんで今年種を播いた野菜が届きます。
その前に、5月初旬から竹の子が栃木鹿沼の田島君から出荷されます(それまでは奈良西吉野・王隠堂さんから出ます)。先日、「竹の子はまだか~、いつからだ~」とFAXしたら、「知らないよ~、竹の子のことは竹の子にきいてくれ~」って返信があったのだけど、一応見通しとしては「5月1日からかな。ただし、今年は雨が少なく春が寒かったのと、表裏でいうと裏年(不作)にあたるので、少ないと思うよ」ということでした。出荷の始まっている九州の産地では、例年の1/7位というニュースも流れていました。
量は少ないかもしれないけど、とれたて竹の子でます。
田島君からが瑞々しい葉付大根・味美菜・小かぶがでています。
G.Wが明けると、栃木鹿沼の鈴木章さんからブロッコリー・カリフラワー・レタス・絹さや・スナップエンドウ・小かぶ・白菜などが出てきます。
神奈川愛川町の北原君からは、リーフレタス・大根・小松菜・長ネギ・チンゲン菜・スナップエンドウ・そら豆などが出荷予定です。
この春1年生になったばかりの長女・雫(しずく)ちゃんは、学校から帰るとさっそくお手伝い。野菜の袋詰めやダンボールたたみや伝票貼りなどをこなし、「もう戦力ですよ」と頼りにしている様子。6月にはあひる店頭直売の予定。
春なので、野菜&ハーブの苗がはじまりました。4月中旬~5月一杯、20種類程の苗が順次出荷されてきます。
バジル・青じそ・ジャーマンカモミール・なす・ピーマン・ミニトマト……、ラインナップと出荷時期を記した注文表を配布中です。作っているのはパクチーを出荷している茨城のハーブスマンです。
果物は、一番人気の黄金柑・甘夏・グレープフルーツ・河内晩柑・レモン、そして酸っぱい夏みかんもでます。
沖縄石垣島の平安名さんからは、味の濃いパイナップルがおすすめ。いちご・バナナ・キウイフルーツといったラインナップです。
野菜・果物とも、間もなく充実してきます。
※あっ!今FAXがきました。沖縄から南瓜がでます。

畑だより ―今回はタマゴです―

端境期に向っています。
野菜(畑)は夏作と冬作が基本で、春作秋作というものは少ないです。
冬野菜(白菜・葉物・里芋・蓮根など)が終わりに向い、夏野菜(トマト・キュウリ・ナスなど)がマダマダというこの時期、百姓は夏野菜の苗作りや土作りに忙しく、八百屋は売る野菜がなく暇しています。
沖縄まで産地が広がったので(25年かかりました)早目の夏野菜が出てきていますが、ボリュームはありません。
そこで、今回はあひるの家が取り扱っているタマゴの話しです。栃木県芳賀郡市貝町の高田さんからになります。
農場名は『ひのき山農場』、会社名は『(有)おひさまぽかぽか』。なんとも、銀行の窓口で「おひさまぽかぽか様~」なんで、アナウンスされたら絶対「ハ~イ」などと出ていきたくない名称です(あひるの家も似たようなもんだけど)。
高田さんとは30年のつき合いになります。
25才の時に、「田舎で動物を飼って暮らしたい」とあちこち探して、「いいよ、貸してあげるよ。ただし、自分でやって」と言われたのが今の処で、桧が林立する森だったそうです。
まずは樵(きこり)から。伐採して整地するのに3年かかり、何度も「やめようかな」と思ったそうです。
はじめは豚も鶏も飼って、加工場も作ってバァーンとやっていたのですが、今は鶏だけで、それも採卵だけになっています。

高田さんの飼育の仕方と[一般の飼育の仕方]を比べてみると、

  • ひよこから5ヶ月かけて飼育し、成鶏になってから採卵をはじめます。
    [100日 (15才くらい)から採卵。体ができていないので病気多⇔薬剤多]
  • 平飼い。一坪に12羽。陽も風も通る鶏舎。昼起きて夜眠る。
    [ゲージ飼い。一坪に70~80羽。7段~8段の棚飼い。ウインドレス。終日照明]
  • 栃木産大麦・小麦、有機農家のモミ付飼料米、卵の殻、カツオ・コンブの食品残さを乾燥。食材を買ってきて自家配合。
    [輸入配合飼料。抗生物質をはじめ、予防薬剤を混ぜる。早く育てるため高タンパク高カロリーが主]
  • 淡い黄色。臭味がない。
    [トウモロコシ、色素など色付け飼料。生臭い]

高田さんいわく、「卵アレルギーの要因は、投与されている薬のせいじゃないかな」とのこと。
ひのき山農場は高田和彦・悦子夫婦と木綿(ゆう)果琳(かりん)の姉妹とお手伝いの人で運営。電話をすると若い娘の元気な声がきこえてきます。
これからも【おひさまぽかぽかの卵】を食べてください。

神奈川愛川・北原くん一家のヨーロッパ旅行記①

トマトソースに導かれ ~有機農場を巡る旅 イタリア編~

昨年の夏の終わりから秋にかけて、大きな台風や長雨の影響で全国的に不作となり、私たちの畑も例外なく大きな被害がでました。そのとき取れるような野菜も打撃をこうむりましたが、一番大きく被害を受けたのは年明けから収穫する予定だった作物でした。
「収穫するものもなくなり、この先どうするんだろうか」と一晩悩みましたが、出した結論は「じゃあ旅にでよう」ということでした。
テレビ番組で見たイタリアの農家は陽気で、家族みんなでトマトソースを作り、お昼ごはんの時にワインを片手に歌を唄っていました。
その姿はまさに農民。こんな生き方、在り方があるのかと感激し、こんな人たちに会ってみたい、という単純な欲求から行先をイタリアに決めました。
ただ、エアーチケットを取る段階で、せっかくだからお隣のフランスも見ておくか、ということになり行き先はイタリアとフランス、全12日間の行程で決定しました。
旅に出るにあたり、幼い子どもたちを連れていくことに心配の声が多数寄せられました。とはいえ置いていくわけにもいかないので、深く考えることなく、家族5人のドタバタとした旅が始まりました。
機内では映画にお酒、読書に昼寝と普段やりたくてもできないことがみっちり13時間もできる!と楽しみにしていましたが、蓋を開けてみればなんのその、「暑くて眠れない」、「せまくて嫌だ」、「気持ち悪い」、「トイレ」などなど3人の子どもたちに振り回され続け、映画一本を見るのに20回は中断させられ、諦めて眠ろうにもすぐ起こされ、地獄のようなフライトに。イタリアに着くころにはこちらの方が疲労困憊になり、あんなに好きだった飛行機に二度と乗りたくないと心底思うようになっていたのでした。

翌日、最初に訪れたのはローマ近郊の有機農場で、32haという私たちの25倍もの面積を有する大農場でした。しかし大きくとも合理的な作付や作業方法で運営しており、すべてはやり方次第ということを学びました。また、フクロウを呼び寄せて圃場にはびこるネズミを駆除したり、自然の仕組みを味方につけての方法論は感動的ですらありました。
途中、今までに見たことのない姿形の野菜を見つけるとその場で食べさせてくれたのですが、野菜大好きの3歳の次男が口に運んだのはラディッキョロッソ。口に入れるとほのかな甘みの後に割と強めの苦みが襲ってきます。それを喜び勇んでガブリ。みるみるうちに顔色が変わり、泣いて、吐いて、残念なことに…。
そんなこともありながら、忙しい中、3時間もの時間を、しかも無償で提供してくれた50代の農家さん。通訳さんを通して丁重にお礼を述べると、「同じ農民のつながりだから」との答えが。同じ大地に根差す農民の絆はたとえ地球の反対側まできてもつながっているのだと感激したのでした。

そして次に訪れた農場は同じくローマ近郊の60代の農家さん。彼は元銀行員でしたが、「人生を見つけるため」と若くして高給もステータスも捨てて脱サラし、ゼロから農民としてスタートした方でした。(高給もステータスもありませんでしたが)自分も同じ脱サラ就農者だと知ると、とても共感してくれました。
数匹の犬や猫が自由に歩き回っているだけでなく、ロバや鶏まで飼っていたため、畑に興味のない子どもたちは動物たちと戯れて過ごしていました。子どもたちの相手をしてくれていた農家のお母さんは「今日ほど日本語が話せたらって思った日はないわ!」と悔しそうにしたのが印象に残っています。

一通り畑の見学が終わると、「うちでお昼を食べていきなさい」と家に招き入れてくれ、ローマ名物のカルボナーラやとれたての野菜で料理をしてくれました。そこでごちそうになったカルボナーラの美味しかったこと。美味しさと感激でこの旅一番の印象に残る食事となりました。

また、予期せず憧れのイタリア農民のキッチンに入ることもでき、それも私たちにとってはとても嬉しい経験となりました。「なんでうちみたいなところに日本人がくるのか!?」と驚きを隠せなかったお父さん、お母さんもキス&ハグで別れを惜しんでくれ、「次は一週間くらいきなさいよ」と涙ながらに温かく見送ってくれ、お土産にはなんと自家製のトマトソースを持たせてくれました。イタリアに行こうと思ったきっかけである、農家のトマトソースです。心から嬉しかったのは言うまでもありません。

その後訪れたのは同じくローマ近郊の40代の新規就農者。北海道の美瑛さながら、どこまでも丘の続く美しい場所でした。
彼はバイオダイナミック農法というやり方で営農し、大地の力、宇宙の力を利用して生命力に溢れる野菜を栽培していました。
圃場を見学中、雨がパラツキ、強風が吹き始め、「一年で最悪の日に来たね」と笑いながら話してくれました。しかしそんな冗談を言っていたのもつかの間、寒風は非常に厳しく、一同鼻水を垂らしながらの視察に。それでもケラケラ笑いながらついてくる子どもたちを見て、「この子たち、すごいね。うちの子には無理だよ…」と感心されたのでした。
その後、寒すぎたために家に招かれ、お茶を飲みながら彼の話は続きます。
「私は製品を作ることに興味はない。食べ物を作っているんだ。化成肥料を使うことは簡単だけど、化学的なものが一切入っていない生命の息吹を感じる土壌で育った美味しく、香る野菜を食べてもらい、健康になってもらいたいんだ」
「イタリアでも若者の農業離れは加速している。だけれども、ぼくたちがやらなくちゃいけないよね!」
「遠く離れていても、考えていることは一緒なんだね!」
と熱く語り、大いに共感して固く握手をしてくれたのでした。そして別れ際にはやはり自家製のトマトソースを持たせてくれました。彼らの中でトマトソースの持つ意味というのが、なんとなくわかってきた気がしました。

ローマ近郊で出会った3軒の農家は60代、50代、40代と全員自分より一回り以上の先輩たち。それぞれにここまでの人生があり、農業における苦労を話してくれました。技術もさることながら、彼らの生きざまを心に焼き付け、イタリアをあとにしたのでした。

畑だより ―年末野菜はあるのだろうか?―

台風がつぎつぎと上陸した夏以降、「こんなに野菜がなかった時はなかったなあ」とタメ息ばかりの今年、サテ、最後はうまく締められるだろうか?ということなのですが、「ダイジョーブです」と言えそうです。
播きなおした秋野菜と、はじまった冬野菜が重なりはじめ、やや過剰になりつつあります。
晴天がつづくと野菜の生育が早く前倒しになり、今度は年末野菜が手薄になるんじゃないかの心配もありますが、「今冬は寒い!」ということなのでダイジョーブでしょう。
まず正月野菜ですが、小松菜・ほうれん草・春菊・ゆり根・セリ・柚子・銀杏・八つ頭・金時人参は豊富にあります。
お雑煮に欠かせない三つ葉は、今季も期待できません。情報を集めているのですが、芳しくありません。
冬野菜としてはブロッコリー・カリフラワー・セロリ・キャベツなどが、霜がおりることがない愛知渥美半島から、いんげん・ピーマン・きゅうり・トマトなどが、今なお25℃ある沖縄から届いています。
金柑・いちごも始まりました。寒さで一段と糖度をまし、野菜・果物がおいしくなっています。
年末は26日~30日まで毎日入荷します。

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畑だより ―野菜がおいしくなってきたゾ!―

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天候も安定してきて、野菜もようやく出はじめました。
寒さを感じる日も多くなり、一枚一枚と着る物を重ねていくように、野菜たちも寒さで凍ったりしないよう糖度をあげて寒さをしのいでいきます。ということは、甘~く実もしまって旨さがまします。
収穫が終って雪景色に変わった北海道の貯蔵庫では、じゃが芋・玉ねぎ・人参・南瓜が、これまた凍らないよう糖度をあげていきます。
野菜ってなんて賢いんでしょうね。生きてるってことだよね。
ということで、大根・蓮根・長ネギ・里芋・さつま芋・ごぼう・北海道野菜がおいしくなってきました。
葉物類も、北原君の畑は小松菜・小かぶ・パクチョイ・わさび菜・京菜・赤リアスからし菜とバリエーション豊かになり、茨城からの白菜・春菊・ほうれん草もはじまり、ラインナップがそろいました。ただ、「霜があたって甘くなる」のにまだ間があるので、味ののりはもう少しです。
寒くなって甘く、味が濃くなるのは果物も同じで、酸味が抜け深い味わいになってきたみかん、各々の味わいがはっきりしてきた【ふじ】【北紅】【千秋】【紅玉】【星の金貨】などのりんご、色も味もよくなった富有柿(ただ、10℃を下まわると透明になってしまうけど、これはこれでウマイ)と楽しめます。
「あ~あ、これから冬かよ、春だったらいいのになあ」と、ついため息がでますが、食い物はうまくなってきます。あったかいものを食べて、元気だしていきましょう。

畑だより ―畑未だ回復せず でも少しずつ…―

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89月の台風と長雨と日照不足で、実っていた夏野菜と育ちつつあった秋野菜が壊滅的被害を受けました。
神奈川・北原君からは、8月中旬から今まで、まだ一度も野菜が届いていません。1030日にお客さんと収穫祭やるのだけど、実っている野菜があるのかなあと心配です(※)。
畑の土は今なお水分が抜けず、種を播いても発芽しなかったり、出ても生育しなかったり、虫にアッ!という間に食べられたりを繰り返しています。
うまくすると11月中にほうれん草・壬生菜・パクチョイ・かつお菜などが育ちそうで、12月にはブロッコリー・カリフラワー・キャベツ・白菜が出そうだという希望的観測です。順調に出るのは「年明けから」ということになりそうです。
影響が少なかった百姓からは、それでも少しずつ秋野菜が届きはじめました。
山梨からは秋大根・レタス・サニーレタス・リーフレタス・かぶ・白菜・キャベツ、茨城からはほうれん草・小松菜・春菊・水菜・チンゲン菜などの葉物類がはじまりました。キャベツ・ほうれん草は極少な目です。11月中旬位には潤沢に入荷し、価格も下がります。
実りの秋満喫は果物です。
奈良・王隠堂さんの富有柿、瀬戸内海高根島・井場さんのみかん、群馬・大野さんのキウイフルーツ【紅妃】、長野・松川有機の超特大梨【新高】、長崎有機の新登場レモン。
そして色鮮やか味いろいろのりんごが青森弘前・伊藤さんから続々入荷です。甘酸っぱい【紅玉】【千秋】、甘くて硬い【ふじ】【北紅】と、お好みに合わせられます。
北海道富良野・阪井君(例年の半作)、神奈川愛川の北原君をはじめ、この夏秋は百姓たちには辛い季節でした。
八百屋にとっても「あれもない」「これもない」と、意気の上がらない時でした。
あと2ヶ月、晴れの快い日も多くなり、「ヨシ!」と気分が高揚してきています。

※元ネタのあひる通信発行時は10月28日でした。北原くんちの収穫祭は参加したみなさんによろこんでもらい大成功こうでした。