【スイートバジル苗】【青じそ苗】【ミニトマト苗】【ピーマン苗】…、4月になるとあひるの店先に並び始めるハーブ&野菜の苗。栽培しているのは、茨城・行方の福山君(通称ハーブスマン)です。
インド放浪中に行き倒れた福山君は、見ず知らずの人の家で介抱され、道端にはえている草花を煮つめた汁を飲まされみるみる回復、命びろいをした体験でハーブのチカラに目覚め、帰国後ハーブ栽培をはじめたのです。命の恩人(?)ハーブに寄せる愛情はひとしおです。
福山君から届く苗は、茨城・ハ-ブスマンの農場内の山で自給した腐葉土や堆肥を使い、特製の土で大切に育てられた苗です。健康に育てられた苗は、植え替えてからの成長ぶりに違いがでます。また香りも高く、丈夫で家庭でも上手に育てることができます。庭やベランダにハーブを植えて、植物とのコミュニケーションを楽しみましょう。
【ルッコラ】【サラダミックス】などのサラダ野菜や、定番の【青じそ】【ミニトマト】などからはじまり、ハーブや夏野菜と続いていき、種類を変えて5月いっぱいまでの入荷です。
店頭にも並びますが、場所の関係で全種類は置けないので、どうしてもこれが欲しいという方はご予約がおすすめです。
只今【ハーブ苗】&【野菜苗】予約注文書配布中。入荷期間が異なりますので、ご都合に合わせて1週間くらいの余裕を持ってご予約ください。
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あひるの店先から ―2つの「奇跡」を乗り越えられるか?―
今日(あひる通信発行日※3月20日)から『ちょこっと有機野菜セット・あひる便』が出発します。
喇叭(らっぱ)や太鼓のにぎやかなリズムにのせて、車の後ろにはいくつもの空缶を紐で結びつけてガラガラいわしながら、春の陽射を浴びたあひる号が街にくり出していく、そんなワクワク感でいっぱいです。
ここ数年、ポラン広場グループの八百屋たちが次々と店を閉めたり、関西の流通グループが京阪電鉄に買収されたり、とても親しくさせていただいていた『大地を守る会』が他の大手グループと経営統合したりと、馴染んできた光景が失われ、ポツンと取り残されたような気がする歳月でした。
店を閉じた八百屋の仲間からは、「あひるが経営的に続けていられるのは奇跡のようなものだよ」と言われ、おつき合いのある流通グループからは「今どき百姓とのつながりを第一に考えているお店なんて遺物みたいなもので、生き残っているのは奇跡ですよ」と言われたりもしました。
「奇跡と言われてもなあ」と思いますが、ここ10年以上経営は逼迫しつづけており、繁盛しているオーガニックショップは明るくオシャレで、生産者のポップも見やすくディスプレイされています。「そうか、あひるの賞味期限って切れちゃったのかなあ」と得心したりもするのです。
「でもなあ」「どうしらたいいのかなあ」と、スタッフ一同ミーティングの度に腕を組んだり頭とかかえたりしてきました。
「今売れる物は?」「お客さんがほしいものは?」「利益幅の大きい商品入れる?」「やっぱり、あひるの物って高いから若い人は買わないよね」「宅配もネットもあるしなあ」「それにしても、もう何年も給料上がってないな」「子供も大きくなって、お金がかかるのよね」「建物補修しないとヤバイけど、金ないしなあ」……
単発のイベントは決まっても、「これからどうする?」の方向が見つからないのです。
経営診断士の方に来ていただいてサジェスチョンを受けたり、都心のオーガニックショップツアーに出かけて販売のポイントをさぐってみたりしてきました。
グルグル、グルグル回って辿りついたのは、「売れる物」や「売り方」「見せ方」を考えても、資金力や知恵力に限りがあったり、「なんかリキ入らないなあ」という感じで、「あひるは八百屋なので、野菜でいこう!」「つながりのある百姓の野菜をもっとたくさんの人に食べてもらおう!」という結論に至ったのです。
どう考えても『ちょこっと有機野菜セット・あひる便』が、あひるの経営をちょこっとはあるかもしれないけど、画期的に好転させることはないだろうけど、八百屋として食べてもらいたい野菜を広げていくことはできるのではないかと思うのです。
螺旋階段を登ってきて同じ地点からはじめようと思います。『ちょこっと有機野菜セット・あひる便』のお申込お待ちしています。 (狩野)
あひるの店先から ―「福島で生きる」トークセッションへのお誘い―
東日本大震災・原発事故から9年が経とうとしています。その間、台風や地震などの災害があまりにも多く起こり、今はコロナウィルスの蔓延報道に気持ちが日々揺れ動いています。
だから、震災・原発事故は随分遠いものになってしまい、忘れがちになります。ぼく自身日々の暮らしの中で思い出すことはほとんどありません。
そんな忘れてしまう自分を知っていたので、9年前「何であれ、このことを10年やろう」と心根にタガをはめたのです。1年に2~3回、福島に行ったり来てもらったりを繰り返してきました。
今回は、昨年6月に仲間と福島を訪れた時に出会ったお二人に来ていただいて、お話を伺うトークセッションを催すことにしました。二人とも福島県二本松東和地区に移住した人です。
関元弘さん(49才)は移住14年目で、畑と自家製ビールづくりと、仲間とともに『ふくしま夢ワイン』を経営しています。移住希望者への積極的なサポートも続けています。
大学卒業後農水省にキャリア官僚として入所し、7年後「人生を選びなおそう」と同僚だった妻とともに入植しました。「激動?の13年間、ワクワクのこれから10年」と語ります。
仲里忍さん(47才)は移住12年目で、農家民宿『ゆんた』を営むかたわら野菜づくりもはじめています。
沖縄北大東島生まれ石垣島育ちで、高校卒業後派遣労働者として全国各地の工場で働き、何度も派遣切りにあい、心と体を壊したそうです。「帰る田舎のない人の田舎になりたい」と語ります。
お二人を囲んで、原発事故がもたらしたダメージのこと、田舎暮らしのこと、有機農業のこと、仲間づくりのこと、百姓になりたいけどどうしたらいい?なんてことをたくさん聴いてたくさん喋るトーックセッションにしたいと思っています。穏やかで勢いのある二人です。
福島の希望だけではなく、あなたの希望も見えてくるかもしれません?!来てみてください。
畑だより ―寒くてイヤだけど、野菜がおいしい―
―寒いと甘くておいしくなる?―
茨城・栃木・神奈川の畑は、この辺りより朝の気温は3℃~5℃低くなります。霜が降りるのはあたり前で、雪も時々舞います。
吹きっさらしの畑でほうれん草も小松菜も大根も白菜も朝には真白く霜におおわれ、陽が昇ってくるとキラキラと輝いています。この繰り返しが、甘さと旨さのヒミツです。
実は、本当に凍っちゃう腐っちゃうので、野菜たちは自ら糖度を上げて、凍死することを防ごうとしているのです。更に、霜~溶けるを繰り返すことで葉脈の筋っぽさを溶かして、やわらかくトロッとした味わいをつくりだします。スゴイですよね、野菜の生命力。
それに比べて、ホッカイロベタベタ貼って、くつ下3枚はいて、暖房強くして……それでも「寒い~」と言っている我が身がなさけない。
―保存することで旨くなる?―
サツマ芋・里芋・じゃが芋・玉ねぎ・人参・ごぼうなどの根野菜は、水分が多いため畑においておくと凍って腐ってしまうので、掘りあげて寒気が入らないよう保存しておきます。
家の中の暖かい所に毛布をかけて置いている人もいますし(北海道の農家でストーブのそばにゴロゴロ南瓜をころがしている百姓もいました)、ワラで囲った室(ムロ)に入れている人や、ビニールハウスの中に溝を掘ってモミガラを敷きつめてサツマ芋をおいて、その上にモミガラを山のようにかけて保存している人もいます。
寝かせておくことでエグミと水分が抜け、甘味と旨味がましてきます(あったか過ぎると芽がでてきたりするけど)。
りんごや柑橘類は凍ることは少ないのですが、置いておくことで酸味が抜け、甘味がまして味が濃くなっていきます。更においしくする工夫として、倉庫の床・壁・天井に炭を練り込んで庫内の空気を浄化させ、味と品質を保とうとしている百姓もいます。
寒さに耐えながらおいしくなっている野菜・果物に感謝していただきましょう。
―寒くないので、とれたて野菜が届いています―
20℃を超える日々が続いている沖縄の島々から、トマト・ミニトマト・キュウリ・ピーマン・パプリカ・インゲン・プチ空豆・島らっきょうと春~初夏野菜がはじまっています。
朝「暖房がほしいな」と思うのはひと冬で2~3回だそうで、ほとんどの家庭に暖房機はないといいます。
たいして暖かくはないけど、暖流と強い風のせいで霜が降りないのは、愛知県知多半島の天恵グループの畑です。キャベツ・グリーンセロリ・ブロッコリー・カリフラワー・大根が届いています。有機第二世代が地域ぐるみでいい野菜を作っています。
「寒い!」から「凍える!」日々がこれからも何回かあるでしょうが、おいしい野菜で体をあたためてください。
年末恒例スタッフご挨拶Part1
ぼくはとってもついていたんだと思う
年も暮れ新しい年が来ると72歳になります。この八百屋をはじめてから42年になります。
振り返ると、「ついていたなあ」とつくづく思ってしまいます。
ついていると言ったって「大金持ちになった」「名声を得た」「宝くじで大当たりがでた」という訳ではなく、この家族でこの仕事を今も続けられているといった程度のものです。
八百屋をはじめたきっかけのひとつが、TOKYOキッドブラザーズの『黄金バット』を観に行ったことでした。
フィナーレで「みんなもステージに上がってこいよ」みたいなアピールがあって、勇気を出してステージに駆けあがり、肩を組んで「街にとびだそう!」みたいな歌を歌い、「そうだ、オレも格好良く街にくりだそう」と思ったのです。
そして、勤めを辞め、リヤカー八百屋として街にくり出したのです。
そんなフィクションの感動がリアルワールドで続く訳がなかったのに、思いもしない仲間がふえ、グループもつくって「ポラン広場ネットワークを全国へ!」の旗印を掲げ、今に至ったのです。
その間何度も何度も「もうダメかな。アウトかな」の局面に遭遇したのですが、とりあえずのレール1本を継いできたのです。
なんだか、一途な真摯な気持ちだけみたいだけど、お金をチョロまかしたり、パワハラやセクハラまがいのこともやったなあと恥じいる気持ちいっぱいのこともありました。
ぼくには秀でたことは何もありませんでした。理想や信念や、人や物やお金に対するこだわりが、仲間たちに比べ強かったり優れていることはありませんでした。
それでも、こんな風にやってこれたのは、「ついていた」としか言いようがないのです。
「来年もこのまんまいけるといいなあ」とノーテンキな気持ちでいます。
1年間本当にありがとうございました。新年は「わたしたちついてるわネ」と笑い合える年にしたいと思います。
狩野
12月15日(日)北原野菜今年最後の大直売やります!
「百姓北原に新しい年は来るのか?!」という位散々の1年でした。今年最後、今畑にある野菜をドッ!と持ってきます。
現在入荷中の【さつま芋(べにはるか)】はお客さんにもスタッフにも大好評。「こんなおいしいさつま芋食べたことない」「スーパーの減農薬のとは子どもの食いつきがぜんぜん違う」「焼き芋にするとしっと~り、ト~ロトロ甘くて最高!」
ほかにもキャベツ・大根・人参・さつま芋・里芋・ワサビ菜・赤リアスカラシ菜……ウ~ン、あとナイかな?
とにかくおいでください!買ってください!励ましてください!11時頃~18時頃まで北原君が直売します。
畑だより ―42作目の竹村いちごはじまります―
「みなさんのオイシイ!の一言がハゲミになります」と、頭に被った手ぬぐいをとってピカピカツルツルのハゲ頭を見せて、「よかったらさわったりたたいてみてください。御利益ありますよ」と店頭を笑いの渦に巻きこむ茨城かすみがうらの竹村さんから、いよいよ苺が届きます。
竹村いちごの栽培状況は
・ 品種 … 甘酸っぱくて香りの良い「とちおとめ」です。昨年10月の手取り除草からはじまって、1年余りかけて育てていきます。
・ 栽培 … 不耕起で年々地力がついて病害虫に強くなっています。大豆・米糠・カニ殻・海藻・貝殻などを2年ねかせ、肥料としてまいていきます。14度ある地下水を汲み上げ、2重にしたビニールハウスの間に雨のように降らすと外気に比べ15度程あがり、保温効果をもたらします。化石燃料を頼ることはしません。
・防虫・防除 … 山野草・黒糖・ニンニクなどを漬けた汁(天恵緑汁)や自家製漢方焼酎などを散布しています。化学農薬は10月2日にヨトウ虫防除に1回使用しました。今試作中ですが、来期は農薬不使用でできそうです。
灯油ガンガン農薬バンバンのいちご栽培の中になって、竹村いちごは稀有の存在です。
「アタマペタペタ竹ちゃんマン」とお客さんの子供たちに人気の竹村さん(60才)ですが、実は200年もつづく由緒(?)ある根っからの百姓です。江戸時代、天明の大飢饉の時に東北地方の二男三男が入植したのが始まりだそうです。計り知れない労苦の末、今に至っているのだと思うと、竹村さんのハゲ頭に後光がさしているように思えてしまいます。
そういうこともあってか、東日本大震災の時の井戸水の供給・炊き出し・見守り活動を担ったり、今も民生委員として地域の困り事相談をひき受けているそうです。
2月7日(土)のあひるの家SALE日に久し振りにやって来て、店頭パフォーマンスを披露してくれるようです。竹村さんから一言、
「仕事と家の都合をつけてお伺いします。それまでアタマにいっそう磨きをかけていきますので、お楽しみください。昨今、取り引き先との関係がただ“生産者”だけになってきています。そんな中、あひるの家での店頭販売はお客さんとのコミュニケーションが楽しめる貴重な機会なので、今から話芸の腕も磨いていきます。今期もいちごをよろしくお願いします」とのことです。
沖縄(23℃)からキュウリ・インゲンが始まります(少量)。年末野菜・果物は順調に育っています。
畑だより ―限界です。このままだと崩壊です―
と、SOSのメッセージを寄こしたのは、卵でお世話になっている栃木芳賀の高田さんです。農場(ひのき山農場)をはじめて37年、1度も卵の値段が上がることはありませんでした。
時々、「値上げしなくて大丈夫なのかよ。他のところ上げてるゼ」ときくのですが、「ダイジョーブです。ガンバリます」との返答。でも、ついにギブアップが発信されてきました。
ヒヨコ~成鶏までの餌を含めた育成費、鶏舎の維持管理費、スタッフの人件費、箱・紙パック代、宅急便の料金……、全てがこの30年余りで倍位になっていました。最近では自分の取り分をとらない(とれない)ことも多くなり、ついに決断した訳です。
【10個入りパック】¥620 【6個入りパック】¥380 【卵1個】¥65 の値上げです。
ひのき山農場(会社名は(有)おひさまポカポカ、銀行の窓口で呼ばれたりしたらハスカシイ!よね。あひるもそうだけど)の鶏卵の特徴をあげると、
1) 平飼い、オスメス混住、開放鶏舎
2) ヒヨコ~成鶏までの一貫飼育
3) 餌は大麦・小麦・お米など地産飼料を使用。非遺伝子組替、放射性物質不検出
4) 穀物は全てカラ・モミ付きを与えることで鶏の胃腸をきたえ、腸内環境を整えることができます
5) 抗生剤の使用はありません
6) 卵黄の黄色はマリーゴールドの花びらの色素です。ちなみにマリーゴールドの花言葉は「健康」です
7) 高田さんの娘・果琳ちゃん29才と息子の裕生君27才が主になって鶏の世話・採卵・出荷などを担い、近隣ではまれな後継者に恵まれています
大幅値上げということになってしまいましたが、“ひのき山農場存続”へのご理解とご了承をお願いします。
話し変わって、この2ヶ月余り野菜の入荷がなかった神奈川愛川の北原君の畑はどうなってるのか?ということですが、台風15号の強風で夏野菜(なす・きゅうり・インゲン・オクラなど)の全てが一夜にしてなぎ倒され、吹き飛ばされなくなってしまいました。
台風19号の豪雨は、白菜や葉物類はやられましたが、大丈夫かなと期待していたキャベツ・かぶ・ほうれん草……などもやっぱりダメで、途中で枯れたりしおれたり病気が出たりと出荷には至りませんでした。
でも、ついに、ついに11月20日頃から始まります。
キャベツ・ブロッコリー・スティックブロッコリー・小かぶ・赤かぶ・ワサビ菜・大根・カーボロネロ(黒キャベツ)・里芋・サツマ芋・生姜・人参が入荷予定です。
12月15日(日)には今年最後の北原君直売イベントをやります。励ましもかねて買いに来てください。
そうそう、11月28日(木)法政大学多摩キャンパスで『SEED―命の糧』の映画上映とともに、北原君のトークショーがあります(あひるポストにチラシがあります)。何話すのかな?いくらもらえるのかな?と楽しみです。
散々だった10月でしたが、ようやく晴れ間の続く11月、野菜も果物も順調に、一段とおいしくなってきています。
トマト・なす・きゅうりは完全に終了しましたが、根菜類を主に味が濃くなり、「冬野菜がやっぱり旨いかな」と思わせる季節です。果物では富有柿がおいしいです。みかんもりんごも味が深くなってきました。
いよいよ冬です。あったかい物を食べて、あったかくなりましょう。
あひるの店先から ―北千住の夜は更けて―
「あの時やめておけばよかったなあとつくづく思いますよ」とのたまわったのは栃木宇都宮の『かぶら屋』(4月廃業・八百屋歴35年)の光内君でした。“あの時”とは、ポラン広場の八百屋をやって12年目、店の立ち退きの話しがあって、多額の立ち退き料を手にした時のことです。
「狩野さんがやってきて説得されて新しい店に移ったんだけど、あとはお金がでていくばかりだったなあ。まあ、自分にも八百屋に未練があったんだろうけど……」
「立ち退きっていえばさ」と話しを引き取ったのは、北千住『椿屋』(9月廃業・八百屋歴36年)の村上君で、「おれはサ、西新宿で友達と2人で小さな喫茶店をやってたんだよ。バブルのど真ん中で、ビルを建てるから立ち退いてくれって言われ、1人1億円もらったんだよ」
「今の店を買ったんだけど、それでも5000万円位残ってたけど、30年の間に全部なくなっちゃたよ。そういえば1度ももうかったことなかったなあ。金も尽きたし、消費税も上がるんでやめたんだよ」
「そう、そう」と体をのりだしてきたのは、阿佐ヶ谷『結』(2016年廃業・八百屋歴39年)のネコさんで、「暑い暑い夏の日、お客さんが3人しかこなくて、あ~あ私は来年の夏もこれをやってんのかと思ったら、もうイヤだ!もうヤメた!と思ったんだよね」
「あひるに行くとアレコレ工夫して元気にやってるのを見ると、私もやっていればよかったかなと思う時もあるんだけど……。あひるが続けているのは奇跡みたいなものだと思うよ」
10月19日北千住で八百屋+栃木の百姓たちとの同窓会での一幕です。懐かしい顔が10名集まりました。
各人が近況や今思っていることなどを話すのですが、「なんにも話すことなんかねえよ」と言うのですが、話しはじめると15分のリミットをこえて、ストップをかけないと話しつづけるのです。栃木鹿沼の鈴木章さん(百姓歴45年)は、
「この間の台風19号で近所の川が越水して、家の方にドンドン流れ込んできたんだよ。水の流れを変えようとブロックや木材を置いたりして、一番気掛かりだったのは牛舎に水が入って牛が暴れ出さないかだったね。ギリギリセーフだったよ」
「70才を超えたかあちゃんと2人、今のままではもう無理だなとつくづく思った訳よ。どうやってこの仕事を終わりにしていくかっていうことを真剣に考えなくちゃって思ったな」
「それって章さん、世間でいう終活ってことですよね」と話しを継いだのは、栃木鹿沼の田島君(百姓歴40年・60才)です。
「おれはさ、今10町歩も耕してるんだせ。近くのお百姓たちがどんどん廃業していって、“田島んところでやってくんねえか”って持ちこんでくるんだよ。村の田畑が荒れて野生動物の住み処になるのも嫌だし、だから引き受けるんだけどさ……」
「あてにしていた息子はサラリーマンになって、かあちゃんと2人+αではとても無理なのでマシンに頼る訳。おれんとこの納屋、農機具の展示場みたいになってるよ。でもさ、気がついたら1日マシン転がして畑の土におりなかったなと気づくとゾッとするね」
「ほら見て。このひとさし指もおや指も足の指もマシンにはさまれちゃって、でも医者いくのいやでサ~グダグダ~グダグダ~農薬は絶対使いたくないしさ~グダグダ~グダグダ~ああ、おれはどうしたらいいんだろう」
有機百姓のホープと目していた田島の悩みを聞いていると、栃木芳賀の養鶏家高田君が話しに割りこんできて、
「田島はまだいいよ(?)。おれはサ、3年前にくも膜下出血をやってから体調不良でさ。娘2人がガンバッテルんだけど、いつ血管が破れるか不安でさ。おれの友達もさ~グダグダ~グダグダ~~~」
8時3分が栃木行き最終列車ということで、喋り足りなさをおおいに残しながら散会したのでした。
廃業した元八百屋の仲間たちの話しを聞きながら、「そうか、こういう風に八百屋を終わりにしていったのか」とここ数ヶ月の売上げの急落に立往生し、先行きを見通せないでいるあひるの家を思い、「明日は我が身」としみじみ思ったものでした。
「希望」を語り合うことはできなかったけど、「絶望(?)」と熱く語り合えたのは、その前数十年に亘りともに歩んできた「自らに語り継ぐ物語」があったからだと思います。響き合う仲間は健在でした。
畑だより ―夏子産まれる!―
栃木鹿沼の鈴木章さんのところで8月13日夏子が産まれました。
汗だくでモウロウとしながら2時間かけてとりあげたのは章さんで、母は花子です。11頭目の子牛です。
「なんて名前にしたんだい?」
「そんな、暑くて考えられねえよ。だからナツコにしたよ」とのことです。
ちなみに、数年前のやはり夏でした。章さんから電話がかかってきて、「産まれたんだけど、お前名前つけてくんない。オスだよ」ということで、一晩考え思い出しました。
牛は一頭一頭識別番号をつけなくちゃいけないらしく、普通「No2374」とかにするようですが、「それじゃあ飼ってる間名前を呼べねえじゃないか。やっぱりポチとかタマとか名前を呼びながら育てたいよな」ということで、思いつかないからこっちに振ってきたようです。
朝晩のエサ(自家配合飼料)やりから、大型扇風機で風を送り、水を補給しシャワーを浴びせと、普段より更に手間のかかることをやっている70才章さん。
野菜もナス・きゅうり・ゴーヤー・インゲン・オクラ・ネギ・ツルムラサキ・モロヘイヤがどんどん育ち、9月中旬には新米刈り取りもはじまります。
そう、秋冬野菜の畑への定植もはじまります。妻のマツさんと2人でやっているのだから、スゴイ!としか言いようがありません。
それでいて、わたしが言うのはなんですけど、ご近所農家の家構えに比べボロだし、生活もつつましそうだし、ようするにお金持ちではなさそうです。
だから、「お~い!」「どうした!」と40年にわたっておつき合いできているのだと思います。
「夏に産まれた子は丈夫に育つ」と言われているので、ナッチャン大きく育ってください。ゆくゆくは丈夫な子を産んでください。それまで章さんマツさん現役なのかな?
神奈川愛川町・北原ファミリーも夏と格闘しつづけました。育っている野菜は章さんのところと同じです。
先日は子供達3人と人参の種まきをやって大盛りあがりだったようですが、「この夏1回位、夏の思い出つくらなくちゃいけないんじゃないの」ということで、今週末か来週、海か温泉に行く予定です。
8月4日、祥ちゃん(妻)が店頭販売に来てくれて、とってもよく売れました。
「北原さんが来るっていうから」「北原さんの野菜はおいしいのよね」と、持って来た野菜を全品目買ってくれたお客さんが何人もいました。
祥ちゃん大感激。「来てよかった。朝4時頃から夜9時位まで毎日追われっぱなしで、わたし何してんだろう?と煮つまっちゃって子供にあたったりして。こんな風に話せて、ヨシ!明日から気分よくやるゾって思え、また来ます!」と、子供たちと自分たちのお土産と本日の売上げを持って帰りました。暑い中来てくれたお客さん、ありがとうございました。
サテ悩ましいのは、同じ品目の野菜を章さんからとるか北原君からとるかです。
答え。両方からとってあひるの店先があふれる、でした。たくさん買ってください。
先日は青森弘前のりんご農家伊藤さんが来てくれました。いよいよりんご本格的にはじまります。シナノレッド・さんさ・未希ライフ・きおう・つがる・いとうと9月からスタートです。
伊藤さんのところは年間60種類位のりんごを栽培していて、昔ながらの旭・国光・いんどりんごなども「各々の良さがある」と、樹を切らずに残している珍しい農家です。
2時間余りたっぷり話しをして、その5分の4は一人息子(中学3年生)の「受験」の話しと、「最近ぼくと口をきかないんですよ」という話しと、「40才まで職を転々とした」話しと、「父と母が認知症になって施設にいる」話しでした。5分の1がりんごの話しでした。
とれたて!新鮮!おいしい!珍しい!伊藤さんのりんごをよろしくお願いします。
野菜は
とまとが青森・北海道に北上しましたが、あとはまだ関東近辺が主力です。7月の長梅雨のせいで全体的には量が少な目ですが、順調です。
果物は
大好評小玉西瓜・パイナップル・すもも・浜田さんのブルーベリー・メロン・桃などが終了に向かっています。替わってりんご各種・巨峰・ベリーA・ネオマスカット・デラウェアなどのぶどうと、幸水・豊水・二十世紀・洋梨などの梨がはじまりました。バナナ・キウイフルーツはいつもどおりです。
新米は9月中旬から台風でやられなければ出ます。
長い長い梅雨と35℃当たり前の夏で「よく生きのびた!」の実感です。くれぐれも体調に気をつけてください。