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畑だより ―もう無理!タマゴ値上げさせてください―

ひのき山農場は栃木県南部の焼物で有名な益子町に隣接する地域にあります。
1982年26歳の時に開設したので40年余りになります。杉とひの木が生い茂り、地元の人達から「ひのき山」と呼ばれていました。
お金も人手もなかったので、チェーンソーを買ってきて樹木を伐採し切断し、鶏舎と豚舎を建てました。勿論、大工やキコリの経験はなかったので難儀したのですが、とても楽しい思い出です。
それ以前は「動物を飼ったり育てたりする仕事をしたい」と思い、養豚場で働いていました。
初めの頃はとても牧歌的な職場だったのですが、400頭を超えはじめる頃から分業化がはじまり、コスト効率と管理が主な仕事になっていきました。
その頃観たアメリカのドキュメンタリー映画は、豚の脚を切断し目をつぶし、ウインドレスにし高タンパクカロリーの餌を与える「先端的な畜産」を告発するものでした。日本も将来きっとそうなるんだろうなと思ったものでした。
「鶏や豚がのびのびと健やかに生活できる環境と、生まれてから死ぬまでをめんどうみれる畜産をやりたい」と思いがつのり、退社して農場をはじめたのです。
はじめて20年余り、鶏と豚の飼育と精肉・ハムの加工もやっていました。70kgを超える豚を素人ばかりが扱うのはなかなか難しくて、養鶏だけに切りかえました。
ひよこ(一日令)から飼いはじめ、土やおがくずを敷きつめた鶏舎の中をとびまわり、昼は窓を全開にして風を入れ、陽射しもたっぷりそそぎこんできます。
飼料は近隣の3人の農家に作っていただいた大麦・小麦が主で、卵を使ってもらっている学校の給食の余剰食材をもらったり、出荷できなかった野菜を分けてもらったり、地域資源を生かす工夫をしています。
だから、無理をして黄身の色を濃くしたり、白身の弾力をもたせる飼料をあげていないので、やや黄色が薄いかもしれません。足りない分は遺伝子組換えフリーの国産原料(ウコン・貝殻・昆布・ミョウガ・ハーブ・唐辛子・大豆粉など)を使っています。
そうすることで鶏たちは元気に生活できていると思うし、それが卵や肉を戴いている私達の鶏たちへの恩返しなのだという気持ちです。
今は4500羽位飼っています。一般の大型養鶏所では100万羽・10段ゲージ2階建て・ウインドレス・遺伝子組換え輸入穀物・薬多投の飼育をしています。
自分の思い描いた養鶏が出来つつあると思っていますが、ここ1~2年のエサをはじめとして包装資材・運送費・水光熱費・人件費などの値上がりは、工夫の限界をこえたものになっています。
スタッフは娘たちも含めて7人いるのですが、万年人手不足です。3Kを通りこして4K(キタナイ・クサイ・キツイ・キュウカガナイ)といわれる職場なので、人がなかなか居ついてくれません。賃金をアップさせなけりゃと思っています。
10年前に脳梗塞をやってから娘たちが気を使ってくれ、日々の仕事は娘たちとスタッフが仕切ってくれています。
だから、個人商店から法人になった時、会社名を娘たち推しの(有)おひさまぽかぽかにしました。銀行の窓口で「おひさまぽかぽか様~」などとアナウンスされると、すぐ立ち上がるのがはずかしいのは今もです。
今後ともよろしくお願いします。

ひのき山農場 高田 和彦

4月1日(土)から価格改定になります 
【平飼い卵】 1個 ¥82 / 6個入 ¥485 / 10個入 ¥805

4月1日、沖縄はなんと海開きです。

ということは、夏野菜がはじまりました。トマト・ピーマン・パプリカ・長なす・ズッキーニ・いんげん・ミニトマト・新玉ねぎ・新じゃが芋……もうすっかり夏です。
ただ、沖縄は海で隔てられているのでトラック輸送という訳にはいかないので航空便になります。「空とぶトマト」「空とぶパプリカ」「空とぶズッキーニ」とイメージ的にはいいのだけど、運賃が高く野菜と同じ位かかるので、売りづらい買いづらいということになりますが、季節先取り野菜を食べてください。
けのひ北原君(神奈川)キテレツファーム神田君(八王子)のところでも春野菜がはじまりました。
春キャベツ・ブロッコリー・のらぼう・菜の花・大根・サニーレタス・リーフレタス・新ほうれん草・新小松菜……冬野菜とはちがった、やわらかくてフレッシュな味わいです。
果物は柑橘類揃いぶみです。屋久島タンカン(これがウマイ!)・甘夏・はっさく・キヨミオレンジ・まだミカン、今年は裏年なので少量入荷・早期終了となります。味としては1月2月が寒かったので、どれも味が濃いです。いちご・りんご(ふじ・王林)・キウイフルーツ・バナナは続きます。
茨城・飯塚さんから、保存しておいたさつま芋(紅はるか)が再開です(焼き芋はやりません)。
もう少しで野菜満開です。

畑だより ―冬の野菜・果物のエライ!を食べる―

2月に入ると冬野菜が終了に向かい、かといって夏野菜はまだまだという長い端境期を迎えることになります。
野菜は基本的に冬型と夏型なので、春と秋は数少ないかその名残になります。
百姓たちは収穫・出荷に追われることも少なくなり、落葉をかき集めて堆肥作りをしたり、春夏野菜の苗作りをしたり、新しい畑の土越しをしたり、ゆったりした日々を過ごしているようです。
ところが、八百屋にとっては2月~4月半ば位までの端境期は入荷する野菜が激減し、あっちこっち手を打つのですが「売る野菜がない」「棚がスカスカ」という辛い時期になります。
「ナイナイ!」を売ってみても売り上げにならないし、モチベーションが上がりません。
「旬の八百屋の宿命だ」「以前はじゃが・玉・人参もなかったんだゼ」と言ってみたところで、お客さんに「なんにも無いのねえ」と言われつづけるとムッとして、「欲しい物がないだけだろ。ある物で工夫してくれよ」と思うこともあるのだけど、見渡してみると「他の店にはあるものなあ」と得心してしまうのです。
そんな愚痴っぽい季節でもあります。
ところが、今ある野菜・果物はウマイ!のです。「寒いけど、野菜がおいしいわネ」と言われるのもこの季節です。
ほうれん草や白菜などは筋っぽさがなくなって甘くなり、みかん類やりんごも甘さが濃くなっています。
それは、吹きっさらしの畑は貯蔵庫の中で凍って傷んでしまわないよう、自ら糖度を上げているからなのです。生命を長らえるための自衛作用ということなのです。スゴイ!エライ!と思います。
「それに比べてオレ達は重ね着したり暖房したり、軟弱だなあ」とも思いますが、寒いことは寒いので感謝していただきましょう。
寒さに耐えて旨味のました野菜・果物がでています。
ほうれん草・ちぢみほうれん草・小松菜・チンゲン菜・わさび菜・ケール・春菊・白菜などの葉野菜も、さつま芋・里芋・人参・じゃが芋・玉ねぎ・れんこん・長ねぎ・ごぼう・長芋などの根野菜も、一年で一番おいしいです。
ただ、凍ると傷むのでギリギリのところですね。
キャベツ・大根・ブロッコリー・カリフラワー・レタス・サニーレタスなどは、暖流が流れているせいで霜が降りない雪が降らない愛知・渥美半島のティエラスから、良い状態で入荷しています。
果物は柑橘類が揃いはじめ、みかん・はっさく・ネーブル・甘夏・伊予柑・デコポンが熊本・福島さんから、りんごは青森弘前・伊藤さんから、いちごは茨城・竹村さんから届いています。
厳冬期、あったくして甘い物を食べて乗り切りましょう。

年末恒例スタッフご挨拶Part1

正解がないから面白い

この夏の過酷な暑さで畑も神田君(八王子・キテレツファーム)もダメージをこうむったようなので、様子を見に行った時のことです。
帰りに旨いパスタを口いっぱいほおばりながら、「ウ~ン、2回熱中症で倒れたし、畑も草だらけで刈りとれないし、追われっぱなしだったし……」「昨年とれた枝豆は実が入らず全滅。昨年とれなかったナス畑は豊作。同じ畑で同じように作っているのに、結果は真逆。どうしてかわからない……」「いったんは佇むのだけど、どうしてなんだろう?どうするかと考えはじめる自分がいるんですよね」「正解がないんですよ。だから考えてやってみる。それが面白いんですよね」「ウ~ン、そうか……。神田、もう一皿頼もうか。シェアしよう」ということになりました。
帰り際に、「オレ、畑で夜が明けるのを見るのが好きなんですよ」と神田君。いい時間でした。
今年1年ありがとうございました。
「自分だったらどんなシーンが幸せな気分になれるかな」といった話しができる新年にしたいと思います。

狩野

11月6日(土)市民祭で“福島応援フェア”やります!

あれから12年。福島で暮らす人や応援する人たちの商品を販売します。食べに来てください!買いに来てください!

★新米おこわ3種(お赤飯・栗おこわ・山菜おこわ)
おなじみ“おむすび屋高ちゃん”が福島の新米もち米を使っておこわを炊きあげます。秋です!お昼過ぎからの販売です。

★りんご(紅玉・ふじ・王林・シナノスイート・特別栽培りんご)
福島二本松のマルカ農園さんか青森弘前・伊藤さんのりんごです。甘味・酸味・香り・歯ごたえ抜群です。

★クッキー・マフィン・おやき各種
福島いわきの山あいにある食堂“きのことマサ”の手作り焼菓子ときのこたっぷりのおやき。エゴママフィンがウマイ!

★手作りジャム3種(りんご・サクランボ・甘夏)
国立で生まれ育ったフレンチシェフ樋口さん。6年前に福島二本松に移住。“道の駅”などでシェフの腕をふるう。一昨年神主さんと結婚。今も若い百姓のかあちゃんたちと料理教室を催している。

★自家製うどん・農産物(ビールも作っているのだけど、販売禁止なので残念!)
キャリア官僚を辞して福島二本松に移住して14年の関さん。“オーガニックあだち”を発足させ、新規就農者や近隣の農家と有機農業を拡める活動を続けている。関さん自家製“ななくさビール”はうまいんだけどなぁ~。昨年4月国立に来てくれ、催しで話した“移住・仲間づくり”は参加者の熱い共感をよびました。

変わらずつながりつづけること、それを楽しみに出来る関係を、これからも提案していきたいと思います。

福島とつながる種まきネットワークプロジェクト 狩野

畑だより ―たたかいすんで 日がくれて…畑に秋がやってきた―

「魔物にとりつかれた」ような過酷な夏に翻弄された畑と百姓に会いに行ってきました。
電車を乗り継いで 京王線堀之内で「キテレツファーム」神田くんと待ち合わせ、早速住宅地に囲まれた大きな空き地のような畑に行きました。
ここは神田くんの祖父が昔桑畑として耕していたところで、「おまえがやるなら使っていいよ」ということで、神田くん(32才)初めての畑です。
実っていたのは丸オクラだけで、とうもろこしもミニトマトもインゲンも立ち枯れています。「どちらにしてももう終わりなんだけれど、この夏はとれなかったなぁ」
次の畑への道すがら自宅と庭先直売所と作業場と小さな畑に寄りました。住宅地の中にある無人直売所は好調で、週末には5~6万円の売上のこともあるというのですからビックリです。街の八百屋(あひるの家)としてはショックです。
そこから15分くらいの小比企は八王子一の耕作地域で、3反歩程の畑がありました。10月中旬~下旬予定のレタス・大根・人参・里芋が葉を茂らしています。
次に向かったのは車で10分位、八王子インターのそばの6反歩程のフラットな畑でした。大家さんの敷地のなかにあり、代々農家だったけれど自分はやらない(高校の先生)ので誰かに使ってもらいたいということで、神田くんが借りているということです(ナント無料!)。
ここには秋冬野菜の殆どが植えつけられ、育ち始めていました。ほうれん草・小松菜・大根・南瓜・わさび菜… 「狩野さん、ちょっと手伝ってもらっていいですか?今とっとかないとみんな食われちゃうんですよ」ということで、手のひらサイズのキャベツとブロッコリーについた5ミリ程の虫をとることになりました。15分位でもうダメ!陽射しは強いし腰は痛いし、ギブアップして栗拾いに行きました。そうそう、この夏の稼ぎ頭の予定だった枝豆は「葉ばかり育って豆は入っいなくてダメだから、畑にすきこむ」と言っていました。
さて昼メシです。「なにかあった時に家族でよく行っていた」というパスタの店『ウッディノート』に。これが旨い!のです。私「貝柱とわさび菜のクリームソース」神田「鶏そぼろときのこのトマトソース」をシェアしながら食べました。
「この夏大変だったろう?」「マックスでしたね。ともかく毎日毎日今日は体がもつんだろうか、とか不安がよぎるんだけれど、畑に出たらやるしかないんでやりましたね」「すごい日々だったけど。灼熱の舞台の上で全力で踊っているみたいで、それはそれで面白かったかな。2回熱中症で倒れたけど」
「農業はみんなそうだろうけど、有機農業は特にこうやったらうまくいくという正解がないんです。そこが面白いんだけど」「有機農業はやっている人が少ないし、個々人がやってるから各々の経験値を寄せ合うことがないので、そんなことを伝え合うネットワークをつくっていけたらと思ってるんです…」
モチベーション高し!「今度もパスタ食おう」ということで駅まで送ってもらいました。
9/27電車とバスを乗り継いで2時間余り、神奈川県愛甲郡愛川町の北原瞬くん祥ちゃんの『けのひ農場』に行って来ました。
庭先で生落花生の水洗いとじゃが芋の泥落としをしている祥ちゃんとスタッフに挨拶をして、早速鶏小屋を覗いてみました。近づくと、餌をもらえると思って47羽の殆どが金網越しに集まってきて「クレ!」「クレ!」と鳴き声をあげる。草をあげると先を争って食べています。「もう5年位になり、1日に2~3個しか卵を産まなくなったので さてどうしたものか考えているんだ」ということです。
トラックに乗って借りている畑16ヶ所を巡りました。2反歩から8畝(反の1/10)1番2番と札がたっています。「1番から6番までの畑は水はけも悪いし日当たりも悪いし、傾斜地もあって野菜がうまく育たないんだけれど、9年前にここに入植した時は紹介されたものを断るなんて立場になかったからなぁ」
どの畑も草が伸びていて、手を入れられていないのが見受けられるのです。
「この夏スタッフも半分になって、その割には販売が好調で、ともかく出荷することに追いまくられていたなぁ。今は燃え尽き症候群みたいな感じだな。間に合わないので秋冬野菜はあまり期待しないでください」と言う夏に5キロ瘦せたという北原くんは、やつれていました。
家に戻り祥ちゃんと一緒にお蕎麦屋さんに行って昼メシです。
「この夏、初めて百姓やめようかと思ったよ。夜8時くらいまで仕事に追われ そこから“せめてゴハンは”と思って急いで作るんだけれど9時過ぎになってしまって、みんな言葉も少なく重い空気が漂う毎日だったなぁ。暑くなる前にと朝は4時頃に起きるんだけれど、そんなの続かないよね。百姓やめれば楽になるのかなぁと思ったよ」 「オレもさぁ 食欲がなくなって、それでも食わなきゃって配達の帰りにスーパーで惣菜を買ってきてみんなで食べるんだけれど、ある日ピザだったんだよ。自分で買ってきたんだけど“ピザかよ”って嫌になっちゃったなぁ」 「子どもたちが植えた生姜も、草刈りが出来なくて子どもたちからはブーイングがでるし、あの時の種代と時間で温泉も行けたし 海にも行けたしと思ったんだよな。もう勝手に草は伸びてたら…と、今は思っているよ」
蕎麦屋を出るときに、お店の人が大きな袋を2つ渡してくれたのです。そばとうどんの切れ端とそば殻が入っていて鶏の餌に混ぜるということです。祥ちゃんは、なすと冬瓜ときゅうりとおくらの入った袋を渡していました。米農家と牛飼いの人たちとも野菜や卵の物々交換をしているとのことでした。
「年内野菜もってあひるに行きますから、2人で!」と約束し固い握手をして、またバスと電車に乗って帰ってきました。
秋の果物がはじまりました。極早生みかん・種無し柿・ぶどう・梨・りんご。野菜は10月中旬ころには安定的に出てくる予定です。
百姓たちの夏は苛烈でした。新米の刈り取りが終わった10月下旬~11月初旬には、栃木県鹿沼の鈴木章さん(米・野菜)、田島さん(里芋・野菜)、高田さん(卵)を訪ねて行こうと思っています。
皆さんの夏はいかがだったでしょうか?

畑だより ―魔物がきたりて笛を吹く?2022年夏―

神奈川愛甲郡愛川町けのひ農場の北原くん祥ちゃんのこの夏の出来事です。
・夏野菜の収穫がいよいよ始まる6月中旬、メインのスタッフの家族がコロナに感染し、その後当人も陽性になり1ヶ月余りの離脱。
・6月下旬の酷暑で、もう一人のスタッフが農作業中熱中症になり倒れる。手がないことで無理をさせてしまったのかと申し訳ない気持ちでいっぱい。涼しくなるまでお休み。
・秋冬野菜のための土づくり・種播きに入る頃なのだけど、春~初夏に出荷した畑の片付けができていないのでそれもできず、朝晩に育つ野菜の収穫に追われ、生姜は草に埋もれ、どこにあるかわからない状態。
・国立の『おへそキッチン(シェアキッチン)』を借りて、例年ケチャップ・バジルソース・しそジュースを作っていたのだけど、野菜はあるのだけど行く時間がとれないのでパスだなぁ。
・50羽程飼っている鶏たちも暑さで産卵率がおち、それはいいのだけど、餌やり水やりはしているのだけど、声をかけたり手をかけたりしてあげられないので、毛艶も悪くケンカもたえず、申し訳ない気がするのだけど、横目で見ているだけ。
・鶏たちもそうだけど、子供たち(3人)にも気を掛けられず、午後から夕方まで海へ連れていっただけで、食事も配達の途中にスーパーに寄って、唐揚げなど惣菜を買ってきてすませる回数もふえている。子供たちも鶏たちも、相当にストレスをためているようだ。
・この夏、北原くんは海に行った半日、祥ちゃん(妻)は休みなし。夜明け~夜9時位まで働いて2ヶ月余りになる。出来ていないことばかりふえてきて、精神的にも体力的にも「ギリギリだなぁ」とボヤキながら、目の前のことをうっちゃっている日々。
・そうだなぁ、唯一の励みは生落花生・ナス・キュウリ・サンマルツァーノトマト・オクラなどが元気に育っていることかなぁ。
・まるで魔物に取り憑かれたような夏だけど、負のスパイラルととらえないようにしている。
・百姓をはじめて10年、これからの課題をつきつけられているということなのだけど、ともかくこの暑さがおさまってほしい。それからだ。
そんな北原くんのところの状況を、百姓歴45年の栃木・鈴木章さんに話したら、「オレも30才~40才位の時はムチャクチャ働いたなぁ。懐かしいよ。そこから自分の身の丈の仕事の仕方や量がわかってくるんだよな」とのコメントでした。
そういう章さん(75才)は、今もほぼ一人で牛を飼い、麦や米を作り、野菜を育てているのだから、「身の丈」というのはスゴイ!ことだと思うのです。
東京八王子のキテレツファーム神田くんは、この夏もほぼ一人で4箇所の畑を夜明け前から駆けずり回って、2回熱中症で病院に駆け込み、数日衰弱して寝込み、また復活する夏でした。
昨夏に続いて枝豆・トウモロコシ・キュウリ・ビーツなど思うように収穫できず、放置してしまった畑もあったようです。
元々一人なので「身の丈」しか出来ないのですが、30才代前半ということもあって、体力と気力の限界など倒れてみてわかるということなのでしょうか。ご自愛を。
豪雨が降り続いている青森弘前のりんご農家伊藤さんの所は、少し高いところにりんご畑があったせいか、坂下にあったりんご園は冠水して、りんごも落ちてしまったということです。
「今年の収穫はダメかと覚悟したのだけど、ほんと2~3mの高低差が明暗を分けたんだなぁ。あとは台風だな。りんごはおいしく実ってます」
畑は秋の端境期に入ります。夏野菜が終わりに向かい、秋冬野菜はまだまだという時期です。
新しく始まっているのが北海道のトマト・大根(空を飛んでくるので高いです)、1000m位高原のキャベツ・レタス・サニーレタス・葉物類です。9月から北海道の南瓜・人参・玉ねぎ・じゃが芋がはじまります。
果物は西瓜・メロン・桃が終了に向かい、幸水・豊水・二十世紀の梨、ぶどう各種りんご各種にシフトしていきます。夏の暑さと日照りで、果物はどれも甘くておいしいです。
サテ、この暑さいつまで続くのか、体力は持つのか不安なところですが、せめておいしい物を食べて寝て、乗り切っていきましょう。

あひるの家アンケート特集

4才~80才代の46人のお客さんからアンケートにお応えいただきました。
お店に買い物に行く前1時間半ウンウン考えて書いた方や、用紙の裏までビッシリ書いてくれた方や、なぜか“プリキュア”のイラストに“あひる大スキ”と書いてあるものもありました。「まるで宿題をやっているみたいだったなあ」という感想もいただきました。
本当にありがとうございました。
アンケートといいながら具体的な項目はなく、おそらくみなさんからのメッセージをきいてみたかったのだと思います。あひるのわがままにおつき合いいただきありがとうございます。アンケートに記されたお声にお応えいたします。

【あひるの家のお気に入りは何ですか?】

・安心して口に入れられる物がそろっている。野菜・果物・油あげなどがおいしい。(複数)
・あひる自家製ぬか漬けがおいしい。季節を感じさせる野菜の漬け物が食べられる。4才の子のいちおし。(複数)
・宝探しのような気分で買い物ができる。
・あひるのキャラ絵、ポップが好きです。(複数)
・【野菜セット】が楽しみ。珍しい野菜が入っていると脳トレになる。
・雨の日のスタンプ2倍のお買い物。
・配達があるところ。
・農家が値段をきめているところ。
・生産者や製造者の販売イベントが多くあり、直接人柄や話しに触れると、その後品物に親近感がわいて、そんな話しをしながら食卓を囲むとおいしさがますような気がする。(複数)
・女性スタッフがふえた頃から、店内が整頓され美しく商品が並ぶようになった。
・あひる通信・Facebookとも面白く、役に立つことも多い。(複数)
・お店もスタッフもゆる~い感じで、ほっとさせられる気分になる。(複数)
・客に媚びない。たまに無愛想。それもいい。
・コーヒータイムに出会うとラッキー。コーヒーがウマイ。(複数)
・いつまでも国立にあってほしい店No1です。

→お応え(お答え)します

・「おいしい!」というお声が一番うれしいです。ただ、“穫れた野菜”“作った品物”を売っているので、届いた品物がまずかったり品質が悪かったりは毎日あります。「なんでこんな物出すんだよ~、バカヤロウ!」と朝怒っています。即連絡して改善するよう話しています。精進します。
・【あひるのぬか漬け】はスタッフ朱くん専任なので喜びます。
・あひるのロゴ・ロゴマークは、40数年前友人のいもむしころう(清重くん)が一週間分の野菜と引きかえに描いたものです。今は朱くんがアレンジしています。
・大根は1本いくら?が適正なのでしょう?勿論あひるが決められる訳がありません。唯一根拠となるのは、農家がいくらだったらやっていけるかということになります。1反歩あたりいくらの売上げがあればやっていけるのか?それがベースになります。作っている人の仕事が一番だと思っています。
・あひるの店やスタッフが“ほっと”したり“楽しかったり”するというお声は、最も嬉しいものでした。あひるの店は“陽だまりの広場”をイメージしているので、ゆる~く出たり入ったりとどまったりできる場でありたいと思っています。

【こうすればもっとよくなるのにポイントを教えてください】

―ただちに実施―
・少しの雨でも、あひるポイント2倍にしてほしい!お客からは言いづらい。
・時々、自転車をどこに停めたらいいか困ることがある。
・時々、野菜の鮮度が気になることがあります。もう少し目配りしてください。
・【野菜セット】の情報をFacebook・TwitterでUPしてくれるとうれしいです。

―只今実施の方法を検討中―
・商品紹介・料理レシピなどがあるといい。(複数)→ 少しずつ実施
・本屋さんのようなPOP的なものをプライスカードにそえる。(複数)
・「欠品です」と言われても、今だけなのか?いつ入るのか?終了したのか?わかるようにしてほしい。(複数)
・日曜日のみのイベントが時々土曜日にもあると嬉しい。
・冷凍庫に何が入っているのかわかりにくいので、見やすく。
・お値段が品物(野菜・果物が多い)に比べて高いと感じることが多いので、お手頃価格を意識してもらえると買いやすい。
・今日のおすすめは△△といった誘導をしてほしい。

―今は無理だなぁ―
・あひるの手作り弁当があれば嬉しい。→ 作る人がいない。玉ちゃん高ちゃんをご利用ください。
・あひるオリジナル商品がふえるといい。→ 北原くん・キテレツ・章さんなどはオリジナルというんだろうか?加工品は今のところないなあ。
・甘味ゆいのたい焼きがまた買えるといい。→ あひる店頭でというのはないので、正月1週間位お店でやっていますのでご利用ください。
・セールの時もPayPay・クレジットを使えるようにしてほしい。→ 5%OFF+カード会社手数料の割引きは今はできないなあ。
・ポイントカードの特典を、もっと豪華だと嬉しい。半分たまったらプレゼントもらえるとか。→ 実利の少ないポイントカードだと私は思っています。ただ、今はこんなところでやらしてほしいと思っています。
・アイスを買った時、ドライアイスを頂けると嬉しい。だからいつも車の中で食べちゃってます。→ ドライアイスを準備しておくというのは、時間が経つと消えてなくなるので難しいです。保冷剤持ってきてください、ゴメン!
・配達をキャッシュレスにしてもらえるといい。→ クレジットカードは機材の関係で無理だけど、PayPayは検討します。
・富士見通りに2号店ができると嬉しい。→ 人的・経済的・体力不足で無理です。
・ビオワインを入れてほしい。→ 酒卸元のラインナップにないので探します。
・ラーメン屋を開くとか? → 食べに行くけど、やることはないです。

まだまだ、あなたの声が聴きたい!あなたの声に応えたい!あひるアンケート実施中

たくさんのお客さんからの「声」があつまり嬉しい限りです。まるで「宿題」のように1時間ウンウンうなって書いてきたというお客さんもいました。
レジをしている時にお渡しいただいたアンケートはファイルしておいて、店が終わってから秘かに読むようにしています。「おまえヤメロ!」なんて書いてあったらやっぱりショックですから、心落ち着けてから読むようにしています。
今までいただいたアンケートの2~3を紹介すると

◇客に媚びない。たまに無愛想。それもいい

◇「○○は終わりました」というのは、今日品切れなのか、シーズンが終わったのか、わからないことがあるので伝えてください。

◇セールの時にPayPayやクレジットカードが使えるといいな。

◇おむすび屋高ちゃんの日、妻が買いに行くとガッカリされるので、「この日は私は行かない」と申しております。

◇レジをしている時、久美さんは後ろの人に声をかけてくれるのだけど、狩野さんは待たせているだけなので、後ろの人に申し訳ないです。

アンケートまってま~す。

★アンケートにお応えいただいた方には、あひるスタンプ10ポイントプレゼントいたします

福島とつながる種まきプロジェクトネットワーク11周年記念トークイベント『12年目の福島と私』

いまだから語れることも いまだから語りにくくなっていることも 語りつくす

『12年目の福島と私』トークイベント

◇スピーカー:市村高志さん(『人間なき復興』著)

◇日時:6月19日(日)16:00~17:30

◇会場:KFまちかどホール(富士見台第一団地内)

◇参加費:1,000円

◇お申し込み・お問い合わせ:080-4351-1353(狩野) tanemakinet@gmail.com

全国各地に避難した富岡町住民の交流の場や、生活情報を交換する場として『とみおか子ども未来ネットワーク』や『とみおか未来会議』を起ちあげ活動。町・県・国などの行政の壁に妨げられたり、時とともに退潮する富岡住民の意識の変化に対応しながら今日に至っている。
抗い難い11年という歳月の変化の中、市村さんとともに私たちのこれからを話し合っていきたいと思います。
短い時間なので集中してやります。ご参加ください。

『語り継ぐ物語』 その2 王隠堂編 ~鬱蒼とした杉林を抜けると、天空の屋敷があらわれた~

奈良市内から車を走らせること2時間。
杉林の山道を行けども行けども民家の一軒も見あたらず、勿論電話ボックスなど見つかりようもないのです。
「もう帰ろうか?きっといたずら電話だったんだよ。腹へったし」
と、関西センターの関君と2人途方にくれていたのです。
「あの峠に出たら帰ろう」ということで、峠の頂に着くと、なんと広大な屋敷が出現したのです。
鳥居のような門構えの柱には「王隠堂」という大きな表札が掲げられていました。
中を覗くと奥まったところに平屋の家屋があり、庭一面に白い玉砂利が敷きつめられています。
重々しい引き戸を開けて、「スミマセ~ン、王隠堂さんいます~」と声をかけたのです。
玄関の壁には籠がつりさげられ、襖には毛筆で何やらしたためられています。
「は~い」声がして、渡り廊下を歩いてくる姿がみえました。
「政見からは伺っておりますので、柿畑にご案内します」と、モンペをはいた老女は王隠堂さんのお母さんでした。
山の中腹の柿畑では、作業着に地下足袋の王隠堂さんが、骨粉の混じった堆肥を柿の木の根元に敷きつめていました。
家への道々、梅林を通りながら「これは梅酒用、あれは梅干用ですわ」と指さしてくれるのですが、梅酒用は青いうちにとり、梅干用はそれを熟させたものと思っていたので、「そもそも木がちがうんだ」と初めて知ったのです。
家に戻ると食事が用意されていました。
素麺・山菜・川魚の天麩羅・香の物というメニューで、素麺のつゆは青竹を半分に割ったお椀でした。
「こういうのは上品にいただかなくちゃいけないんだろうな」と思いながらも、腹が減っていたので即完食でした。
屋敷の裏手の山々が一望できる縁台に座って話しをしたのです。
「王隠堂さんの敷地ってどの位あるんだい?」ときくと、腕を左から右にぐるりと回して「見えるところすべてです」と言うのです。
話しをきくと、700年余りつづく旧家で、南北朝時代に後醍醐天皇を匿ったことで「王隠堂」という名をいただいた、ということです。
「国産材の需要が激減して山仕事がなくなり、農作物も柿と梅と花梨位しか穫れないので、西吉野から若者たちがどんどん街に出ていってしまったんですわ」
「先日奈良新聞を見ていたら、『有機八百屋開店』の記事が出ていて、連絡させてもらったんですわ」
「傾斜地の多い村では、どうしても平地に比べ畑仕事も収穫量も厳しいものがあるので、何か特徴になるものがないか考えていたんですわ」
その横顔は、父親の急死で若くしてかつての大地主を継いだ並々ならぬ矜持を感じさせるものでした。
有機八百屋をはじめて3年の関君と私は32才、「西吉野を有機の里に」とチャレンジしようとしている王隠堂30才、ともに意気投合して山を下りたのです。
ふもとで食堂を見つけ、ラーメンの大盛りを食べたのは言うまでもありません。
その後、梅・柿・花梨は勿論のこと、梅ジャム・柿ジャム・花梨ジャム・梅シロップ・梅のどあめ・花梨あめ・柿チップ・柿せんべえ……と、ともに商品開発をすすめ、ポラン広場グループはこぞって販売に力を入れていったのです。
西吉野村に円型プールのような梅干の作業所をつくり、仕事をつくり出していったのです。
商品企画の半分は売れず、製造販売中止になっていくのだけど、売れ筋の商品を王隠堂は生協やデパート、スーパーへと売り込んでいったのです。
商品企画会議で山を下りてきた王隠堂はなかなか帰らないようで、よく家から「政見はいつ頃戻るんでしょうか?」と電話があり、ポランのスタッフも「スミマセン!会議が長びいていて」と電話を切るのだけど、「会議はおとつい終わってんじゃん。ミナミで政見見たってよ」ということもままあったりしました。
和歌山にも梅林を広げ、レストランもはじめ、「王隠堂ブランド」は広く信頼をあつめるようになっています。
そのはじまりが、あの日だったかもしれないと思うと、八百屋冥利に尽きる1日でした。

『語り継ぐ物語』のこと

あひるの家の商品棚には数多くの品物が商品として並べられています。
商品ひとつひとつには人の営みの積み重ねがあります。
こだわりやゆずれないものや守りたいことやすすめたいことなど、なかなか商品だけでは伝えられない一端でも知っていただけたらと思い、「物語」(不定期掲載)をはじめることにしました。
ちなみに『語り継ぐ物語』その1は、前々号のあひる通信「沖縄編」でした。
パン屋さん魚屋さん豆腐屋さんお百姓さん……皆さんの日々の営みと重ね合わせ、励みになるようなものが記せたらいいなと思います。